内容説明
黒死館の当主降矢木算哲博士の自殺後、屋敷住人を血腥い連続殺人事件が襲う。奇々怪々な殺人事件の謎に、刑事弁護士・法水麟太郎がエンサイクロペディックな学識を駆使して挑む。江戸川乱歩も絶賛した本邦三大ミステリのひとつ、悪魔学と神秘科学の結晶した、めくるめく一大ペダントリー。
著者等紹介
小栗虫太郎[オグリムシタロウ]
1901年、東京生まれ。推理小説作家、秘境冒険小説作家。京華中学校卒業後、会社員を経て印刷業を始めた後、小説をこころざす。「完全犯罪」が認められ、探偵小説文壇デビュー。雑誌『新青年』『オール讀物』『モダン日本』などに異色作・意欲作を発表した。1946年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
370
★☆☆☆☆ 日本三大奇書の一つ。 『ドグラ・マグラ』は、話が冗長だが内容は普通に理解できるのに対して、こちらは全く訳が分からない。 暴走する法水に突っ込みを入れつつ、読み進めるコメディ風ミステリと捉えればいいのかもしれんが、訳が分からなすぎて笑う感覚すら失われる。 知識量は膨大だが、特に犯行を防ぐでもなく、むしろ他の人に任せておけばもっと早く解決したのではと思わせる無能ぶり。それなのに超天才のように描かれているのは、今となっては微笑ましい。 しかし、この長さを考えると再読はしたくないな…2023/06/26
かみぶくろ
113
日本ミステリー三大奇書の一つ。ペダントリーの極致ともいえる蘊蓄の洪水で、正直半分以上意味不明だった。とりあえず作者のジャンル横断的な博識ぶりに驚嘆(絶句)する。オカルト雰囲気漂う洋館での不気味な連続殺人という筋書き自体はなかなか楽しめるのだが、謎解きが難解すぎて読者のおいてけぼり感が半端ない。というかこれ、作者自身も読者とか論理性とかどうでもよいと思ってそう笑。好きなものを好きなように書いてたらこんな奇跡みたいな奇書が出来てました、みたいな感じか。ミステリーだが、芸術風味。疲れるけど一読の価値あり。2016/01/02
コットン
87
再読。引きつけられながらも難解で読みにくく、少し(理解できればもっと)面白い;殺人事件が起こり犯人はあっさり解説で明かされるにも関わらず、この本の主な魅力は別にある。つまり本文中の思想や神秘学・医学・魔術・心理学・文学の書物には虚構と現実が入り乱れ独特の世界観に浸りきれる本。今回、予習としてゲーテ『ファウスト』を読み雰囲気は少し掴めたが、あまりに博識・独創的・解釈の多様性などにより消化不良ながら3週間かけてなんとか読み終えたというのが正直な感想。カルトなカルチャーがここにある!2013/07/24
優希
71
日本三大奇書の1冊になります。悪魔的であり神秘的であるように思いました。黒死館を舞台に流れる血生臭い香りが、一大ペダントリーとして物語を成立させているのではないでしょうか。連続殺人に知識で挑むからこその世界があり、奇異的な空気を纏う探偵小説として成立していると言えますね。2020/06/10
里愛乍
60
ジャンルとしては所謂ミステリであり謎解きであり…であるはずなのだが、日本語とはここまで複雑に表記できるものなのかと問いたくなった。まさに〝奇書〟である。なぜなら、言葉とは文字の羅列でしか無い事を改めて認識させられたからだ。そこから書き手の意思が伝わり、感動したり考察したりできることの方が、むしろ奇跡なのではと思ってしまう。ここまで読者に対して思いやりの無い、容赦の無い、かつ読者が諸手を上げて読みたがる奇跡のような本書。ルビ打ちの文体は凄くお洒落で素直にカッコいいと思います。2017/09/21