内容説明
強権を発動し幕府の政治・軍事組織、鎖国体制を完成する三代将軍家光。島原の乱と寛永飢饉。牢人とかぶき者。幼少の四代将軍家綱。「神国」の威光と虚構のもとに内外の秩序が確定し、将軍権力が確立していく過程を描く。
目次
「生まれながらの将軍」―プロローグ
1 家光政権
2 鎖国
3 国家の威光と虚構
4 泰平の光と影
5 家綱政権
生類憐みの時代へ―エピローグ
著者等紹介
杣田善雄[ソマダヨシオ]
1949年奈良県に生まれる。1981年京都大学大学院博士後期課程修了。2002年京都大学博士(文学)。現在、大手前大学総合文化学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
13
家光・家綱の時代の概説書。主君との親密な関係や個人の能力による抜擢人事から、制度化された統治システムへと変化していく様子が興味深い。秀忠や家光と違い、大御所の威光が存在しなかった家綱の代替わりでも大きな混乱が存在しなかったのは、それだけ幕府のシステムが洗練されたということなのだろう。教科書的で淡々とした筆致だが、将軍が戦時の軍事司令官から、平時の専制君主へと変貌していくのがよくわかる。2020/03/09
アメヲトコ
6
近世政治史シリーズの第2巻。家光と家綱の時代が対象で、属人的関係の世界がしだいにシステム化していく過程が分かりやすく描かれます。こういう過渡期の試行錯誤は、その後の制度が必ずしも自明ではなかったことに気づかせてくれます。2018/08/29
陽香
2
201301102017/01/21
奇天
2
徳川政権確立期を描いており、政治史的側面に関しては非常に分かりやすい内容だった。一方で、圧政や飢饉の描写では、史料的制約があるのは理解しているが、「多数」の餓死者が出たといった記述が多く、具体的なイメージを持ちにくかった。歴史人口学や経済学的なアプローチがもっと欲しいと感じた。地域別、年代別の死者が他の年と比べてどれくらい増加したのかという視点がないと、表層的な悪政論で終わってしまう。2012/04/02
てり
1
読みやすくわかりやすい記述で好印象。戦乱が終わり安定していく世の中での支配体制の確立から変化の様子。外交と鎖国、民衆支配の苛烈な現実など。牢人・かぶき者の問題や大岡忠相、長谷川平蔵の話も興味深かった。好著。2021/12/27