出版社内容情報
天皇を代々支え続けた摂政・関白。その地位は他の貴族を圧倒する絶大な権力を握っていた。藤原氏の摂関政治が隆盛を誇った平安後期から豊臣秀吉の関白就任まで、天皇や天皇家との関係を通して、摂関職の継承と権力の変転を描く。後継者の早世、家督争い、政治抗争による解任…。幾度の危機を乗り越え、その都度新たな価値を創出した摂関家の歴史。
内容説明
天皇を支えた摂政・関白。それはいかなる地位でどのような政務に携わったのか。平安後期から秀吉の関白就任まで、摂関職の継承と権力の変転を描く。幾度の危機を乗り越え、その都度新たな価値を創出した摂関家の歴史。
目次
「望月」のあと―プロローグ
摂関政治の時代
院政の時代
武家勢力と戦乱の時代
五摂家分立
南北朝から戦国へ
中世摂関家の終着点―エピローグ
著者等紹介
樋口健太郎[ヒグチケンタロウ]
1974年、愛知県に生まれる。1997年、龍谷大学文学部史学科卒業。2007年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。現在、龍谷大学文学部特任准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アメヲトコ
11
摂関政治の全盛期として登場する藤原道長以降、摂関家とはどのように中世を生き抜いてきたのかを通史的に見た一冊。五摂家が互いに熾烈に競争しつつ、不測の事態に翻弄されながらも時代に応じて自らの役割を模索していくプロセスが興味深いです。しかし本文中で無能無能連呼される近衛基通よ。2021/07/19
はら坊
10
摂政・関白の誕生から近世初頭までの摂関家の歴史を、「摂関」という地位に着目して概観した書。 史上初の幼帝・清和の即位を受け母后の代理として政務を執った摂政、嵯峨上皇以来内裏に入れない上皇の代わりに天皇の後見を務めた関白は、「摂関」という地位によって得た政務能力・有職故実を武器に、院政や武家政権の誕生や発展など、時代の変化に対応しながら生き延びたのである。 豊臣秀吉の関白就任が、平氏政権以来武家と結びながら地位を保ってきた摂関の「武家化」の帰結であった、という考察は腑に落ちた。2021/05/07
不純文學交遊録
9
サブタイトルに惹かれた。藤原道長から豊臣秀吉まで…そう、近衛前久の猶子となった秀吉も、藤原氏であり摂関家なのだ。摂政は天皇代行であり、関白は天皇の補佐役。摂関政治の全盛期は道長・頼通の時代だが、院政は摂関政治の否定から始まったわけではない。また、摂関の世襲が確立したのは五摂家が分立した鎌倉時代である。中世から近世にかけての歴史は、武家政治の視点で語られるのがほとんどだから、京都の公家社会から描かれた本書は、新たな気付きをもたらしてくれる。2021/08/30
預かりマウス
9
摂関家の歴史を解説するオーソドックスな書。摂政・関白職を主題にした平安朝から戦国期までの概説書は今までになかったため、貴重である。九条道家から二条良基までと、二条良基から近衛前久までの時代の摂関の事績は、公卿補任記載の叙位任官の年次以外、ほとんど説かれることのなかった空白の時代であったが、この空白の時代についても割と詳細に筆が割かれており、大変参考になった。一条家、鷹司家は近衛家・九条家に比べれば比較的に影が薄いが、時期によっては他の摂家を抑えて主導権を握っていたこともあったということがわかる。2021/08/01
フランソワーズ
6
王権、藤原氏の時代、院政全盛期、そして武士の世といった具合に時勢に合わせて姿を変えた。自らが権力の頂点に立ったり、権力者を利用したり、また利用されたりしながらも、明治維新まで存続した摂関家。タイトルの通り「摂関家の中世」の通史でありながらも、いつの世にも権力の中枢にいたことから、”摂関家からうかがえる中世”が浮き彫りにされていて、とても興味深かった。2024/04/21