内容説明
戦国時代百年もの間、なぜ将軍は滅亡しなかったのか。戦国期の室町幕府とはいかなる存在であり、各地の大名たちは将軍をどのように見ていたのか。知られざる将軍・幕府の実態を明らかにし、戦国期日本の全体像に迫る。
目次
戦国時代の足利将軍を問い直す―プロローグ
将軍存立をめぐる基礎知識(相互に補完しあう将軍と大名;戦国時代の幕府と“幕府”)
戦国時代の将軍と大名(大名間における栄典の機能;ゆるやかな連合としての将軍と大名;征夷大将軍と足利氏)
将軍義昭と織田信長(義昭を利用する信長;義昭・信長「二重政権」の構造と淵源)
“天下”の次元の三和音(“天下”の次元と“国”の次元;“天下”をめぐる三つの視点)
戦国時代の足利将軍をどうイメージすべきか―エピローグ
著者等紹介
山田康弘[ヤマダヤスヒロ]
1966年、群馬県に生まれる。1990年、学習院大学文学部史学科卒業。1998年、学習院大学大学院人文科学研究科博士後期課程修了、博士(史学)。現在、聖学院大学、小山工業高等専門学校非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
12
戦国時代の足利幕府の役割を平易に解説した一冊。将軍と大名たちの相互補完による「安全保障システム」として幕府を捉え、信長以前の複雑な畿内情勢を「勢力均衡」の論理で読み解く。こうした国際政治学の用語を援用した説明が効いており、動乱の中でも幕府が一定の権力を保てた仕組みが理解しやすくなっている。ただ終章で幕府を国連に例えて分析を行っているのは少し疑問で、最後にピントがずれてしまった感もある。2019/10/05
珈琲好き
9
戦国時代の幕府がどういう機能を担っていたのか、なぜ弱いのにしぶとく信長に食い下がれたのか分かりやすかった。最近の信長の野望シリーズをやってれば外交において孤立することの危険は理解できるしね。/しかし、足利将軍の直轄軍が千人程度の弱小勢力になったのはいつ頃なんだろう。最初から弱小だったとも考えずらいし。2018/09/02
アポトキシン
6
図書館で出会った歴史書。足利将軍の栄枯盛衰を中心に、足利将軍の例を挙げて現代社会に警鐘しているようにも感じた。分かりやすく名著。2017/04/24
wang
4
戦国時代の将軍の存在意義を、権力があったとされる室町時代の足利将軍とは何か?そして傀儡化が最も進んだ織田信長と足利義昭の関係に絞り詳述。室町幕府の権力構造をこれほどわかりやすく解説した本は初めて。そもそも領地も直轄軍も少なく始まった将軍家が全国統治を行うため、在京大名との協力関係が不可欠だった。それが応仁の乱で大名が在地化。細川京兆家・赤松・三好三人衆など小数の大名の権力の独占化が生まれてしまい、信長もその一人。無力化したとは言え、諸大名が将軍家を重視したのは何故か?信長が最終的に将軍不要になったのは?2017/12/20
Minoruno
4
応仁の乱以降有名無実化していく足利将軍家、という通説に対して実はそう単純な話ではなかったという事で足利将軍家の権力の実態を検証している。室町幕府そのものが守護大名との相互補完によって成り立つゆるやかな連合政権であったという特色が将軍権力の実態を見えにくくしているのかもしれないなぁとも。前段階の鎌倉幕府、後の徳川幕府と比較すると権力体制の過程が見えてきた気がした。2017/07/17