出版社内容情報
★読売新聞 2009.6.28 に紹介されました! 評者:本郷和人氏(日本中世史家)
内容説明
室町幕府成立後の尊氏・直義兄弟の確執は、義詮・直冬の争闘を経て、幕府と鎌倉府という二つの支配体制成立の要因となる。対立の実態を『太平記』などから当時の政治過程に位置づけて再現。神護寺三画像の比定も試みる。
目次
歴史における兄弟の相剋―プロローグ
足利氏のふるさと―足利荘と鎌倉
室町幕府成立へ―尊氏・直義のあゆみ
室町幕府と観応の擾乱
「薩〓(た)山体制」の成立と崩壊
尊氏・直義の人物像
京の夢、鎌倉の夢―エピローグ
著者等紹介
峰岸純夫[ミネギシスミオ]
1932年群馬県に生まれる。1961年慶応義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。現在、東京都立大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あきあかね
26
「豆を煮るに豆がらをたく」―兄弟が傷つけ合うことのたとえ(広辞苑) 1991年のNHK大河ドラマ『太平記』では、足利尊氏が弟直義に毒を盛る場面が鮮烈だった。鎌倉幕府の打倒、南朝との対立にあたり、ともに力を合わせてきた兄弟であったが、1350年に起こった観応の擾乱で、両者は対決する。敗れた直義は尊氏と和議を結ぶがまもなく没する。ドラマでは、尊氏が勧める菓子に毒が入っていることを知りつつもそれを口に運ぶ直義と、毒に悶え苦しむ直義の声をかき消すかように幼い日の思い出を滔々と語る尊氏の姿が心に刻まれた。⇒2020/03/05
叛逆のくりぃむ
7
正妻である金沢貞顯妹について觸れなかつたりと史料的には舊さがある。2015/12/14
nob
5
『観応の擾乱』の参考書として。 軍事尊氏・政務直義の担当二分体制(『観応の擾乱』では否定されてた)から、薩埵山体制を経て、京・鎌倉府という地域二分体制が確立する過程が本書の軸。さらに残された資料をもとに兄弟の人間性にも迫る。 感傷的なサブタイトルの割には読みやすい本ではないが参考になる。2018/11/28
いきもの
3
鎌倉幕府崩壊から、足利尊氏と直義の兄弟政権体制、その後の対立が深まる構図、尊氏、直義の死後実現される京と鎌倉の兄弟国家実現。足利兄弟の周辺を丁寧に書いてはいるものの、著者の研究をまとめていると見受けられる部分も多くやや軸がぶれている。直義の夢であった鎌倉府というのもよくわからない。特段意外性のある内容などはないが無難にまとまっている気はする。2014/05/16
印度 洋一郎
3
足利尊氏と直義兄弟の骨肉の争いに焦点を当てて、足利幕府成立と南北朝の動乱を見る。足利幕府が京都と鎌倉の二つの都を持つ、”兄弟国家”を指向していたという考察だった。東国の都だった鎌倉府成立の過程の考察は面白かったが、総じて散漫な読後感なのが惜しい。考察する対象をあちこち広げ過ぎている嫌いもあった。2010/11/23