内容説明
博学・明晰をもって聞えた江戸時代を代表する儒学者。激動する社会経済の実態を見すえ、経済学を「経世済民」の学問と位置づけたその経済理論は、世界にも通用する先進性をもち、師の荻生徂徠を超えるものがあった。誰憚ることのない直言と、多くの門人を育てた謹厳実直な生涯を、「春台学」の系譜と学問的評価、逸話を交えて描く本格的伝記。
目次
第1 太宰春台の生涯
第2 太宰春台の著書と主著の要説
第3 世界に通用する太宰春台の経済理論の先進性
第4 「春台学」の生成と社会経済的背景
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
19
肖像画は悩みがありそうな深刻そうなお顔(冒頭)。荻生徂徠に入門。孔子道をきわめたという。経世学=経世済民の学および術(5頁)。春台は飯田市に望郷の深さを『産語』跋(あとがき)に記したようだ(6頁)。だが飯田を追われ浪人生活の貧窮と孤独にさいなまれた(7頁)。50歳ころから古文辞学に傾倒(17頁)。春台は記憶力すごい(強記)。『大日本史』暗記していたというので(28頁)。師匠徂徠の豪放磊落に比べ、春台は端正謹厳(31頁)。肖像で容易に理解可能。春台は食、次いで貨(たから)が大切とする(84頁)。2021/03/24
きさらぎ
5
明治45年生まれ、京都大学農学部農林経済学科卒業、産業経済学教授が書いた春台。「儒者」の本を読んでリカード(比較生産費説)だのケインズの有効需要だの価格弾力性だのという言葉に出会ったのが中々に新鮮だった。私には「春台は「経学」では徂徠を全く越えられなかったが、「経世の学」においては徂徠を越えた」という筆者の見解が(適否はともかく)面白かった。儒者の経世学=(政治)経済論は経学から導かれるが、経学の深化と経世学の深化はイコールではない。そこがはっきりしたことが一番大きな収穫だ。文章もこなれて読みやすい。2015/09/09
tnk
1
春台や徂徠、仁斎らが朝鮮において引用・批判されていたり、中国では消失した古典籍が日本に残るものをもとに復刊されたり、近世における学術交流の存在が指摘される部分が興味深かった。2018/07/18
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