内容説明
新井白石は詩人として名声は琉球・朝鮮・清朝にまで及び、学は和漢洋を兼ね、人文・社会・自然の諸科学にわたる碩学であった。「正徳の治」を企画して幕政のレヴェルを上げ、オランダには「将軍の師」と伝えられた。明治以後は第一級の日本人と評価され、学界では「近代科学の父」とされてもいる。白石研究の第一人者が心魂をこめて綴った伝記。
目次
第1 “火の児”
第2 「天下一」を志向
第3 文武の修行
第4 禁錮追放と俳諧熱中
第5 詩壇の明星
第6 賢師・英王との出会い
第7 梅薫る天爵堂
第8 甲府侯西城入と昇竜白石
第9 「正徳の治」への貢献
第10 豪気四海を蔽う
第11 千駄ヶ谷幽居の賢者
第12 学究の鬼・不朽の文業
結び
感想・レビュー
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きさらぎ
3
平成元年出版。大正6年生、白石を追究して40年の研究者が古稀を越えて執筆した人物叢書。何せ参考文献も含めて古いので他書に当たる必要はあるのだろうなとも思うが、とにかく積年の白石愛が行間に滲む気持ちのいい本である。筆者は白石の本質を豊かな感性をもつ「詩人」にみる。ただ詩といっても儒者における詩は「(詩経により)近くは父に仕え、遠くは君に仕え、多く鳥獣草木の名を知る」端緒となるものである。その志をもって親に師に仕え、主君に仕え、そして博学の儒者たるべく国内外の事物に関心を持ち続けた白石の姿は慕わしく亦美しい。2018/07/20