内容説明
幕末の豪農は、多くの政治情報や異国船の来航など、重要な機密情報まで入手していた。彼らの日記や情報集・書状を通して、身分を越えた広範な情報伝達の構造を解明。維新へと動き出す幕末社会に与えた影響を考察する。
目次
第1編 幕末期村社会の情報構造(幕末期の情報交換と機構の変化―天保期寄場組合大惣代と関東取締出役;村方情報の主体と継承―寛延四年豆州江梨村における名主交代事件の語るもの;「日記」に現れた村落上層民の人間関係―下総国結城郡菅谷村大久保家を事例として)
第2編 幕末の政治情勢と村落上層民の行動(幕末期関東豪農の政治意識の形成―武州入間郡平山村斎藤家の場合;志士と豪農;幕末期における一草莽の軌跡)
第3編 海防と海村(幕末期異国船防備体制と村落上層民―九十九里浜を事例として;開港期の異国船と村人;村落上層民の異国船情報収集活動―大久保家の場合)
著者等紹介
岩田みゆき[イワタミユキ]
1958年島根県に生まれる。1982年青山学院大学文学部史学科卒業。1985年お茶の水女子大学大学院人文科学研究科(修士課程)修了。現在神奈川大学日本常民文化研究所専任職員
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感想・レビュー
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志村真幸
1
1990年代にさかんになった江戸期の情報研究のひとつ。 幕末の豪農豪商たちは、激変する国内情勢に対応して情報を集めており、風説留と呼ばれる文書類が各地に残っている。それらを分析したのが本書となる。 伊豆、下総、武蔵といくつかの地域に伝わる文書がていねいに読み解かれており、異国船出現への対応、志士として政治活動にくわわった農民たち、国学者を中心としたネットワークの形成、さらには幕末の混乱期が商業的なチャンスでもあったことなともよくわかる。 ただ、全体としてはもう少し見通しを示してほしかった気がする。2021/05/18