内容説明
「家」とは農民にとってどのような意味をもっていたのか。近世農民のライフサイクル全体を対象に、生活史・社会史の視座から多面的に迫る。諸種の史料を駆使し学際的視野から新しい歴史学の方法を実践的に示す。
目次
第1部 近世の国家・社会と家・氏・人生(幕藩制国家と家・社会;近世農民のライフサイクルと家・村・国家;近世の国家・社会と苗字・姓氏)
第2部 近世農民と家・村・地域(近世における農民層の「家」意識の一般的成立と相続;近世農民層の葬祭・先祖祭祀と家・親族・村落;近世後期の親子間紛争と村落社会;地域とコミュニケーション)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コーリー
1
地域差があるものの、農民の「家」は17世紀から18世紀にかけて成立した。「家」とは、固有の「家名」「家産」「家業」をもち、先祖代々への崇拝の念とその祭祀を精神的支えとして、世代を超えて永続していくことを志向する組織体である。農民は先祖代々の通名を「家名」とし、通名を所有名義としている不動産は「家」に所属する「家産」であった。この「家」意識は農民の生活意識の核となり、膨大な生産エネルギー、強靭な闘争力を生み出す源泉ともなった。本書を通じて近世を生きた大多数の人々である農民について、多くを知ることができる。2020/05/13