出版社内容情報
織田信長による焼き討ちで伽藍の大部分を失った比叡山延暦寺に関する研究は、焼失前に偏り復興後は看過されてきた。全山にわたる建造物の総合調査をもとに、焼き討ち後の伽藍復興に着目。建築の継承のあり方や現在に至る伽藍形成を丹念に検証し、近世における天台宗寺院の特質をも解き明かす。建築史・日本史・宗教史の重要な視座となる注目の書。
内容説明
織田信長の焼き討ちで伽藍の大部分を失った比叡山延暦寺に関する研究は、焼失前に偏り、復興後は看過されてきた。全山の建造物を調査し、建築の継承や現在に至る伽藍形成を追究。天台宗寺院の建築的特質を解き明かす。
目次
焼き討ち後の延暦寺の伽藍復興の意義
第1部 比叡山の地勢と歴史(延暦寺の開創と伽藍の形成;比叡山の地勢と三塔十六谷の構成;元亀の焼き討ちの背景と伽藍復興)
第2部 焼き討ち以降の延暦寺の復興(豊臣政権における焼き討ちからの復興;家康・家光による復興と寛永寺の開創;綱吉期における寺社復興と延暦寺 ほか)
第3部 延暦寺建築の特質(延暦寺の現存仏堂の構成と特質;延暦寺の廟所建築の特質;特殊な建築構造と組物―延暦寺型鐘楼と雲形肘木 ほか)
破壊と再生を通した継承の建築史へ
著者等紹介
海野聡[ウンノサトシ]
1983年千葉県に生まれる。現在、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授、博士(工学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chang_ume
7
織田信長焼き討ち後の延暦寺伽藍復興について、各仏堂の建築特徴と各期ごとの造営体制を整理する。全体としては規範をめぐる墨守と革新をテーマに据えながら、既往研究にて不足していた延暦寺の近世近代伽藍史を描き直す試みだろうか。著者が意図した規範性への着目は、寛永寺造営と延暦寺復興を並行的に捉える視点にもっとも顕著だったかもしれないが、やや理解がむずかしい。著者が関与した『比叡山延暦寺建造物総合調査報告書』(2013)を元にしただけあって、比叡山・坂本の建築ガイドとしても有用だった。2024/09/09