内容説明
今やわれわれはナチ経済、あるいはナチ体制それ自体についての新たな再論を試みることができる地点に立っていると思われる。本書は、その達成点がどんなに不十分なものであったとしても、そのささやかなひとつの試みである。
目次
第1部 1920年代ワイマル体制期(「産業合理化運動」と生産過程の変革;合同運動の展開―ダイムラー=ベンツ社の成立過程;自動車市場と企業間競争;ドイツ自動車工業諸企業の経営危機とその諸要因 ほか)
第2部 1930年代ナチ体制期(ナチ政権の「モトーリズィールング」政策;自動車企業の競争―ダイムラー=ベンツ社対アダム・オペル社、さらにはフォルクスワーゲン社の設立過程;外貨危機への対応;ドイツ自動車諸企業の軍需部門への進出 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
4
第一次大戦後のドイツ自動車産業の去就とナチスとの関係を分析した論文集。1920年代、アメリカの自動車産業の攻勢に晒され、伝統的な徒弟制的チームで作られる高級車生産体制から小型車大量生産体制への変換も上手くいかずに不振が続いたドイツ自動車産業は、当時の産業界の雄である石炭と鉄道業界の影響力が強いワイマール体制に冷遇され続け、新興政治勢力のナチスへと接近する。ナチスは自動車産業と航空産業といった当時のベンチャーとワイマール体制との対立という利害の一致をみた。そして、自動車化にメリットを見出す軍部にも接近した。2022/11/26