内容説明
豊かな実務経験と学問的知見を有する著者が、民事裁判における判断形成の世界をひもとく。司法の担い手として、国民の信頼に応える裁判官はどうあるべきか。その解がいま明らかになる。
目次
第1章 民事裁判について(はじめに;裁判の本質;裁判官の判断 ほか)
第2章 民事裁判の実体形成過程(判決手続きの流れ;民事訴訟の基本原則;具体的事件 ほか)
第3章 民事判断の基礎的構造(判断の枠組み;判決事例の検討;バランス感覚 ほか)
第4章 民事判断の特質と陥穽(実践的「判断」に性質:実践的「判断」のアドバイス;合議)
第5章 事実認定(事実認定の重要性;事実認定に必要とされるもの;事実認定の手法 ほか)
第6章 判例(判例とは;判例の位置づけ;法令の解釈の統一 ほか)
第7章 裁判官の法的判断形成過程(裁判過程;判決理由の重要性;裁判官の判断形成過程 ほか)
著者等紹介
土屋文昭[ツチヤフミアキ]
現在、東京大学大学院法学政治学研究科教授・弁護士。1974年京都大学法学部卒業。1976年裁判官に任官し、2008年東京高裁判事を退官するまで33年間の大半を民事裁判に携わる。その間、司法研修所教官(民事裁判)、東京地裁部総括判事等を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ま
14
「(当事者に)共感すると同時にこれらから距離をおくことが必要とされる。」裁判官は目線の設定が難しい職業なのかなと思った。あと直感も大事。というと軽さを感じさせるが、あくまでも膨大な知識と経験に裏付けられた直感。「裁判官は、伝統により形成され、類推により方式化され、制度により訓練された、そのような裁量権を行使しなければならない。しかも、『社会生活の道理という根底的な必然』に従ってこれを行使しなければならないのである。そうはいっても、裁判官に残された裁量の範囲というものは、確かに十分広範なものである。」2021/02/17
olive
1
民事裁判実務の面白さ、奥深さを垣間見ることができる。裁判官はもちろん、法律関係者全般にとって、有益な視点が散りばめられている。特に、民事事実認定や判例の射程論辺りは、受験生・修習生の学習にも資するところ大と思われる。薄いので、読む気力が削がれることもない。2015/08/20
TM
1
名著。裁判官の思考過程が,自己の経験を交えて,論理的に考察されている。弁護士は,仕事をするにあたって,裁判官がどう判断するのかを常に頭に入れていなければならないが,弁護士のほとんどは裁判官だったことがない。裁判官の思考過程の一端を覗ける本書は,弁護士必読の書だと思う。2015/03/05