内容説明
「自意識の強烈さ」では同じ位相にありながら、充溢する自己を前面に出す志賀直哉を、若い頃には文学的に畏敬しながらも晩年には猛烈な反撥の対象とした太宰治は、志賀とは逆の欠如態をもって作家的誠実の証とした。太宰の代表的テキストを精読し、一方で対極に位置する志賀を合わせ鏡として太宰文学の独自性を考察する論稿。
目次
第1部 作家論―志賀直哉との《関わり》を梃子として(太宰治における志賀直哉の位置;太宰治の単一表現 ほか)
第2部 太宰治の作品世界(「魚服記」の語り―その様態への一つの試み;「道化の華」の構造―「僕」の位相についての試み ほか)
第3部 志賀直哉の作品世界(「クローディアスの日記」の世界;「城の崎にて」の構造)