内容説明
宝貝やラピスラズリのような物資だけでなく、馬・車や去勢の風といった複雑なアイディアや技術をともなった事物の伝播を事例に、シルクロードをひらいたといわれる張騫の時代以前の東西交渉の跡を追いながら、世界各地域が孤立することなく補完しあいながら歴史をかさねてきた事実を浮き彫りにする。
目次
第1章 “シルクロード”以前―文明圏を超えて(東西交渉とは;遠方への意識 ほか)
第2章 張騫鑿空記事の検討―張騫以前にも在った路(張騫実績の背景;匈奴と騎馬遊牧 ほか)
第3章 ラピスラズリの路―遠距離交渉の確認(くりかえされる交易―原料獲得の路;“遠方”という意識―他世界との交流 ほか)
第4章 運ばれた馬と車―複雑な事物の伝播1(アイディアと発明・技術・デザイン=複雑な事物の伝播;麦―西アジア型農牧複合の伝播 ほか)
第5章 去勢の風は東伝したのか―複雑な事物の伝播2(去勢をめぐる問題点;去勢の目的 ほか)
著者等紹介
川又正智[カワマタマサノリ]
昭和21(1946)年5月新潟県生。京都大学文学部史学科卒業・同大学院文学研究科博士課程単位取得。国士舘大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tama
12
図書館の書棚から 面白かったー!地図帳引っ張り出して地形など見ながら読むとサイコー!例えば金属技術の拡大史を描いた図で、ある地域からすぐ隣に行くのがえらく時間かかってるのを地図帳見ると「山脈がある!」、ある種の麦の分布が「川!谷間!」など。こういう楽しみって言うのは別物ですな!図版多く、しかもかなり精細。しかし、ここの図書館、全5巻の選書の中からこれだけを選んだのはナゼ????2018/04/22
いくら丼
5
ラピスラズリと交易の歴史について知りたくて手に取ったので、馬に関してはかなり読み飛ばしました、が、麦の伝播やドメスティケイションについてもあってほくほく!ヽ(=´▽`=)ノ途中の「初期の家畜にあまり小型の哺乳類はいない」との引用で、アンデスのクイ(テンジクネズミ)を思い出しました。クイっていつからでしょう。アンデスの場合は文字資料がなく古代が一層不明ですが、にしても数千年の歴史あるはずのリャマやアルパカがまるで度外視された文章は悲しかった(泣)アメリカ大陸の学問上の悲劇……でも収穫多くて面白かった!(笑)2021/10/12
上り下り澱
1
コロンブスは何をした人かと聞かれたら、アメリカ大陸を発見した人と言うとこれは誤りです。アメリカにはネイティブアメリカンが既にいました。じゃあ欧州人ではじめて発見した人かというとこれも違って、アラスカを通って既に欧州人も大陸にはいっていたそうです。しかしそれでもコロンブスが伝えた大陸というのは、キリスト教世界に大きな影響を与えました。シルクロードを作った張騫も似た感じで、シルクロード以前から東西交流はありましたが、それでも尚張騫の遠征は西方にも中国圏にも大きな変化を生み出した訳です。2014/07/05
あらい/にったのひと
0
いや、これまためっちゃ面白い本でしたね。タイトルの通りで漢より前から東西の交流はあったのでは? あったとして、いつどのような形態で? というのをラピスラズリと馬、去勢という3種の動きから考える本。わからないことについてははっきりとわからないと書いてあり信頼度が高い。逆にこれ読んだら全てが分かる系の本ではないので、そうゆうのがいいひとは他所に行ってください。著者は既に故人ですが、この流れで研究を引き継いでいるひとがいるといいなあ、と思いました。独特の文体も雰囲気があってよいです。2023/05/24




