内容説明
これまで美濃の古墳を中心に、その実態把握と動向を長く追究してきた著者が、全国的視野と分析によって東海の古墳文化を考察。環伊勢湾の地域社会はどのように形成されてきたか、美濃の覇者・昼飯大塚古墳を始めとする古墳の変遷や埴輪・石製祭器などを詳しく分析、さらに畿内との関係を説く。
目次
序章 歴史学と地域研究―本書の目的と研究視点
第1章 古墳時代における濃尾平野の地域圏と社会(地形環境と古墳時代の遺跡立地;土器の地域色 ほか)
第2章 古墳築造の諸様相と政治単位(前期古墳の地域性―前方後方墳と前方後円墳の共存;前方後方墳の系譜 ほか)
第3章 古墳の造営と儀礼の共有(古墳研究にみる儀礼と造墓;埴輪の製作と造墓 ほか)
終章 環伊勢湾社会の古墳時代地域構造
著者等紹介
中井正幸[ナカイマサユキ]
1961年岐阜県大垣市に生まれる。1985年立命館大学文学部史学科東洋史専攻卒業。1987年名古屋大学大学院文学研究科(考古学専攻)博士課程前期修了。1987年岐阜県大垣市役所に勤務。2005年立命館大学にて博士(文学)取得。大垣市教育委員会文化振興課に勤務
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遊動する旧石器人
0
環伊勢湾ー東海西部地域をフィールドとした古墳文化の研究書。2005年5月発行で学位請求論文を骨子としている。筆者は大垣市で埋蔵文化財行政に身を置きながら研究を続け、学位請求論文を提出。東海西部地域の地理、濃尾平野の地域圏、古墳築造の画期、そして儀礼へと話が及び、結びに至る。中央政権との距離感を様々な視点から考察する。2016/03/21
Takashi
0
再読。東海地方の有力墓を編年し、画期を設定、系統をみとめ、古墳時代の地域構造を論じた一書。古墳築造に際して地域社会の自律性を重視した論調。階層化・序列化された古墳群をヤマト政権の影響を強くうけた所産と評価、古墳群を様式化することによって、中央政権との距離感を示すバロメーターとしてとらえる。既往の研究史の取り扱いも丁寧で、地域社会の復元から古墳時代を考えた類書のなかでも優れた一冊としておススメしたい。2014/07/05