内容説明
2012年1月に亡くなった日本を代表する作曲家、林光さんによる現代作曲家考察。楽譜を通じ、時に忘れられ、時に歪められてきた作曲家の真意や、音楽と時代との関わりなどを読み解く。
目次
楽譜からのぞく世界
ヘンツェの足跡
ルイジ・ノーノ
レオシュ・ヤナーチェク
ユンイサン(尹伊桑)の軌跡
ハンス・アイスラーの歩み
クルト・ワイル
幻のショスタコーヴィチ全集
アルノルト・シェーンベルクの楽譜(私的出会いに沿って)
海賊版とコピイのある風景(間奏曲風に)〔ほか〕
著者等紹介
林光[ハヤシヒカル]
1931年10月22日、東京生まれ。東京藝術大学作曲家中退。尾高尚忠、池内友次郎に作曲を師事。1953年間宮芳生、外山雄三と作曲グループ「山羊の会」結成。同年、「交響曲ト調」で芸術祭賞、1956年「オーケストラのための変奏曲」で第4回尾高賞、1961年映画『裸の島』(新藤兼人監督)の音楽でモスクワ映画祭作曲賞、1996年ヴィオラ協奏曲「悲歌」で第44回尾高賞など受賞。日本オペラへの多大な成果により、オペラシアターこんにゃく座の芸術監督および座付作曲家として第30回サントリー音楽賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
13
合唱曲「水ヲ下サイ」をはじめとする作曲や評論(朝日の夕刊の演奏会評がいつも楽しみだった)を通じて常に反戦・反体制の旗幟を明らかにし、高尚なゲイジュツではなく民衆の生の声に耳をすませた林光から見た20世紀音楽の豊饒に驚く。ナチスの収容所で作曲を続けたヴィクトル・ウルマン、スペイン内戦で処刑されたガルシア・ロルカの歌と彼に触発されたF.プーランクやL.ノーノ、ナチ化した出版社から版権を引き上げたバルトークなどを論じる同時代の同業者の視点が新鮮。柴田南雄や武満徹ら僚友へのオマージュも印象的だった。2016/10/01
hr
2
ヤマハの輸入楽譜・出版情報誌に林光が連載したものを集めたもの。作曲家像に迫る切り口が面白いし、出版事情や印刷譜の様相が分かって興味をかきたてられる。楽譜を読むこと、編曲のこと、自筆のこと等々。まるで聞き書きのように滔々と綴られる文章には、少々読み手を放置していくような素っ気なさも。それくらい情熱をもって書き上げた文章たちなのだろう。読了しての収穫は、ロドリーゴの声楽を伴う作品、フランセ晩年の作品に出会えたことかな。2018/03/04
メルセ・ひすい
2
初出紙 日本楽器製造株(現ヤマハ株)の輸入楽譜・出版情報誌『楽譜音楽書展望』に記載した「楽譜からのぞく世界」1994年と「新。楽譜からのぞく世界」 およそ20年間をまとめたもの。作曲家・林光による現代作曲家考察。その独特な語り口はとても魅力的(聞かせ上手)で、生前を彷彿させる。凡庸な視点、炯眼、同時代の作曲家の視点から、現代作曲家を縦横無尽に語る評論集。楽譜を通じ、時に忘れられ、時に歪められてきた作曲家の真意や、音楽と時代との関わりなどを読み解く。2013/04/17
もよ
0
作曲家が作品をスコアを読み解く視点で(プロの目で)コメントするというおそらく類を見ない書籍。 その曲のスコアとスコアを読める技術(私にはどちらもない)があると100倍くらい味わい深いのだろうが、素人の私でもかなり楽しめました。2014/01/02