内容説明
雪中行軍とその2年後に勃発した日露戦争、悲惨な「冬の戦争」の実態が暴かれる。数少ない生存者たちの証言と上級指揮官たちのその後の行動から、日露戦争と大量遭難の真相に迫る。
目次
第1章 雪中行軍の生存者たち
第2章 津川連隊長の岩手耐熱行軍
第3章 旅順総攻撃
第4章 友安旅団長の二〇三高地
第5章 第五連隊の出陣と八甲田山追憶
第6章 立見師団長、苦戦の黒溝台会戦
第7章 冬の戦争と雪中行軍
著者等紹介
伊藤薫[イトウカオル]
1958年、青森県生まれの元自衛官。第5普通科連隊(青森)、青森地方連絡部、中央情報隊(市ヶ谷)などに勤務し、2012年10月、3等陸佐で退官(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えみ
58
八甲田山雪中行軍遭難事件の犠牲は一体何だったのか。何のための訓練だったのか。と、甚だ疑問だ。雪山に散った199人の無念は結局2年後の日露戦争に活かされなかった。服装・装具の寒さ対策、糧食の凍結対策、寒冷地での行動目標、そして指揮命令系統の統一。どれも八甲田山の悲劇で十分身に染みたはずなのに、改善も進歩もしていなかった。この活かされない過ちの繰り返しは、当時の日本だけではなく現在にも通じるところがある。それだけではない。会社や組織といった規模でも日常的に起こっている。学習し改善して成果を上げる…心に留める。2022/01/10
ようはん
25
以前に読んだ「八甲田山 消された真実」の続編となる内容。映画にもなった八甲田山遭難事件は対ロシアに備えての雪中行軍の訓練が目的で、多数の犠牲者を出した要因に不徹底だった防寒対策があったが、得られた教訓を生かせず日露戦争でも多数の犠牲者を出してしまった。改めて119人もの犠牲者を出したと考えるとそれこそ対策を徹底しなければならなかったのだが…2022/03/15
まんむー
10
日露戦争に備えて行った八甲田山雪中行軍の遭難事故の教訓は生かされていたのか。遭難時、生き残った人たちのその後と証言、日露戦争での旅順陥落、第八旅団が派遣された黒溝台の戦いの状況を調べて語られている。「戦史や事故報告に本当の教訓などないのかもしれない。偽りからまともな教訓など得られるはずもない。無責任がそうしてしまうのだろう。高官の失敗や誤りを隠蔽し、真の教訓は葬られてしまうのだ。」今にも通じることか。2021/02/17
ふたば
9
八甲田山において、199名が死亡し、わずか11名がかろうじて命をつないだ遭難事故を生存者の記憶から検証している。軍上層部や指揮官たちがあまりに雪を知らなかったことが、遭難がわかってからの初動の誤りがあまりにも悲劇的な結果を招いたのだと著者は綴る。その後、日露戦争においても、この八甲田での経験が生かされなかったことに言及している。権威主義で、現場を見ない体質は、実際現代になってもあまり変わっていないかもしれないと思う。あまり、今までは興味を持たなかった事故だが、もう少しいろいろ読んでみたいと思った。2019/10/03
Hiroki Nishizumi
8
人間は大失敗しても生き方を変えられないものなのだろうか。向き不向きもあると思うが、なかなか難しいものだ。他山の石になれば幸いだ。2021/02/14
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