内容説明
宝剣山荘から緊急の連絡が入る。すぐに仕度を整えて、遭難現場へ。山荘の支配人でありながら、民間パトロールの第1人者として遭難者の救出に尽力した半生の記。
目次
1 カールの登山者もよう(標高二六〇〇メートルの観光地;自称“ベテラン”登山者の危うさ ほか)
2 静寂のなかの千畳敷(千畳敷の初めての山小屋;山小屋暮らしの日々 ほか)
3 心に残る救助活動(中アの遭難救助の最前線、千畳敷;遭難者を背負っていたころ ほか)
4 雪崩の恐怖(独学で学んだ雪崩の知識;三人の従業員を雪崩で失う ほか)
5 レスキュー・サイドストーリー(あわや凍死。夏山の危機一髪;雷の恐怖 ほか)
著者等紹介
木下寿男[キノシタトシオ]
1935(昭和10)年、長野県上伊那郡中沢村(現駒ガ根市)生まれ。52(昭和27)年に千畳敷ホテルの増設工事の仕事を手伝ったことから、中央アルプスに入るようになる。以後、千畳敷山荘や天狗荘の管理人などを経て、67(昭和42)年に中央アルプス観光株式会社に入社。同社が経営するホテル千畳敷の支配人として腕を振るうかたわら、中央アルプスにおける遭難救助活動や自然保護活動などに尽力してきた。また、地元の駒峰山岳会会員としても積極的に活動。中央アルプスや南アルプスにいくつかの初登攀の記録も持つ
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感想・レビュー
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roatsu
12
中央アルプスは千畳敷カールを中心に、現・駒ケ根市出身の著者が同山域において山のエキスパートとして経験し、見つめ続けてきた遭難救助とその変遷を中心とする手記。50年を超える時間軸に渡り、不便だが古き良き時代からロープウェイ開通に代表される利便化と山岳レジャーの大衆化が進んだ最近までを俯瞰する記録は個人的な体験記であっても現代登山の同時代史といえ、とても興味深い。登山をする者には一度読んで終わりではなく何度も読み返して糧としたい厳しくも温かな著者の言葉が詰まった一冊。2015/09/13
ふたば
1
半世紀以上、山の安全を求めて奔走している人たちがいる。まだ、どっぷり冬山なゴールデンウイークの頃の千畳敷に行ったとき、たった1時間半の滞在中に3回も補導員に呼び止められた経験がある。耳タコなくらいどこに行くか、ここ以上に登るなと念を押された。この本を読むと、身勝手で自分本位な登山者たちのびっくりするような行動を知ることになる。山は美しく、素晴らしい世界ではあるが、それもマナーを守り、自らの安全と他者への気配があってこそ楽しめるというものだ。これからも登山者の楽しい登山をフォローして欲しいと思う。2017/06/03
FPGA
0
中央アルプスでの山岳救助の様子を描いた本。筆者は中央アルプスで長年遭難者の救助に携わっている。ロープウェイの開通で激増した山に「無知」な登山者や、ベテランの筆者の忠告を無視して登山を行った挙句遭難する登山者が後を絶たないことなど、いろいろと考えさせられる内容も多い。2014/06/02