内容説明
竜門卓は大阪の北端、能勢の広大な山林に居を構え、行方不明になった猟犬探しを生業としている。犬の相棒、ジョーと慎ましい日々をおくっていたが、ある日、暴力団組長の女から盲導犬の捜索依頼が舞い込んだ。誇り高き男の贈り物をテーマにした「セント・メリーのリボン」、老人と馬の逃避行を見守る「サイド・キック」の2作を収録。稲見一良が紡ぎだす動物の力強さ、自然の美しさ、男の気高き魂を谷口ジローが描きあげた傑作集。
著者等紹介
谷口ジロー[タニグチジロー]
1947年生まれ、鳥取県鳥取市に育つ。1975年に「遠い声」で第14回ビッグコミック賞佳作に入選。以後、精力的に作品を発表し続け、『「坊っちゃん」の時代』で第22回日本漫画家協会賞優秀賞、第2回手塚治虫文化賞マンガ大賞などを受賞。著作多数。イタリアやフランスをはじめ海外での評価も高い。2017年、永眠
稲見一良[イナミイツラ]
1931年、大阪府生まれ。記録映画のプロデューサーを経て、1989年『ダブルオー・バック』で作家デビュー。1991年『ダック・コール』が第4回山本周五郎賞受賞。作品を通じて誇り高き男の魂を書き上げ、多くのファンにいまなお愛されている。1994年、永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
ミスランディア本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
goro@80.7
52
稲見一良で谷口ジローで「猟犬探偵」それも今まで2冊に分かれてた「セント・メリーのリボン」と「サイド・キック」を合本にした完全版ですよ。谷口ジローの「K」や「捜索者」を読んでいたので、稲見氏の物語はもうこれ以上にないコンビでしょ。「セント・メリーのリボン」は涙ものだよ。生き別れであろうと死に別れであろうと犬は相棒、これほど辛い物はないが一緒に海を見ているカットにリチャードの言葉は絵があることによって一層尊く、イメージを醸し出している。ヤマケイ文庫のこの1冊は永久保存版です。2021/11/28
マリリン
45
収録された二作品とも表題から持つイメージとは良い意味でかなり違う。原作者の稲見 一良氏の作品は未読だが読んでみたいと思わせる。2作品とも動物と人間社会との関わりというのが谷口氏らしい。失われつつある情の大切さが2つの作品から伝わってくる。「セント・メリーのリボン」からは犬の賢さと情の深さを感じ、最後の場面を原作と変えたという「サイド・キック」は、人が何に心を動かされ、浄化されるのかが伝わってくるとても良い作品だった。残念なのは文庫本では谷口氏の細密な画風のよさが解らないこと。2022/08/06
剛腕伝説
20
狼犬を相棒に、猟犬探し専門の探偵・竜門卓。目が不自由な娘のために盲導犬を盗む父親。盗んできた盲導犬だとは知らず知らず、愛する少女ハナ。任務を遂行し、二人の仲を引き裂いた竜門は、ハナに盲導犬利用訓練とラブラドールをプレゼントする。タフで優しいハードボイルドな男。『犬の一生は人よりも遥かに短い。犬を飼い続けるということは、犬のいくつかの生と死を見つめ見送る事になる。』『人は犬の命の輝きと避け難い終焉を自分の人生に照射しつつ暮らす事になる。』『犬は何もしなくても傍にいてくれるだけでこの上ない幸せなのだ』そう・・2022/08/23
緋莢
19
狩猟中に行方不明になってしまった等の猟犬を探すことを専門にする探偵・竜門卓。子犬の時、山中に棄てられていたのを拾い、ジョーと名付けた雑種犬を相棒にしている。 猟犬探索しか行わない竜門だったが、盲導犬の探索をしてほしいという依頼が入り…稲見一良の小説「セントメリーのリボン」、「サイド・キック」を、谷口ジローが漫画化したもの。「セントメリーのリボン」では、自分の土地に嫌がらせをしてくる暴力団の組員と対峙したり 「サイド・キック」の方では、ちょっとした戦いはあるものの、全体的には暴力描写はかなり少な目(続く 2023/06/12
ムーミン2号
10
「セント・メリーのリボン」と「サイド・キック」の合本版で、かつカラー頁もそのままの完全版。だけど文庫本、というのがいかにも惜しい。細密に描きこまれた谷口ジローさんの描画を堪能するには、文庫本はなぁ・・・。お話は猟犬を専門に探すことを稼業としている竜門卓という一匹狼を主人公とし、相棒のジョーという狼っぽい犬と一緒に猟犬とはちょっと違う犬や、後者では馬と厩務員を探す物語。どちらもラストは心あたたまる、いい作品だ。時間が経つのも忘れるほど読むふけってしまった。2022/05/13