内容説明
山小屋で働き、山小屋で暮らす「小屋番」。山小屋を守り、受け継いできた小屋番による、ちょっと懐かしくて、ちょっとあたたかい気持ちになるエッセイ、全53話を収録。ピオレドール受賞クライマーで南アルプス・甲斐駒ヶ岳七丈小屋管理人・花谷泰広さんの特別寄稿を収録。
目次
第1章 山小屋の仕事十二カ月(山小屋の「正月」(山口孝(涸沢ヒュッテ))
尾瀬の季節(星菊芳(原の小屋)) ほか)
第2章 新しいわが家をつくる(日本でいちばん小さな山小屋(手塚宗求(コロボックル・ヒュッテ))
愛鷹の翁(加藤満(愛鷹山荘)) ほか)
第3章 山小屋に入り、山を見つめる(「新米管理人」、二年目の夏へ(清水ゆかり(朝日小屋))
小屋番を楽しむ(佐伯直樹(大日平山荘)) ほか)
第4章 山小屋をめぐる人々(山の哲人(星美知子(両俣小屋))
徳本の住人(今川剛之(徳本峠小屋)) ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
519
美しい装丁画に惹かれて。そこに描かれるのは、山に魅入られ、山を仕事とした男女(そう、中には女性もいらっしゃる)の思い。山小屋設立、再建、そして経営のご苦労。最大の難関はやはり、地上では当たり前のものが当たり前に手に入らない苦労だ。それが解決すれば今度は出力(早い話がおトイレ事情)の問題。自然保護叫ばれる昨今、ソレがこれほど大きな問題になっているとは知らなかった。わたしが山キャンしてた当時は、みんな普通に野トイレしてたものなぁ。山好きもそうでない方も、現実逃避にはうってつけの一冊。2023/02/25
あじ
36
電気、水道、食料そして文明の利器が限られた空間で、登山客に尽力する生き生きとした小屋番の姿が読み取れるエッセイ集。トイレ問題に取り組み成果を上げた小屋番もいれば、山と自宅を夫婦交代で行き来し育児に励んだ小屋番もいた。私の関心どころは後継者問題だ。設立1300年〖鬼が守る山〗には並々ならぬ興味を抱いた。▣本書は2008年版を再編集し2021年に文庫化。山小屋の基本情報に“その後”を追記している。2021/05/30
くろにゃんこ
26
すごいなぁ、たくさんの山があってたくさんの山小屋がある。雪をかき分け荷上げをし、訪れる人を迎えてくれる。そこでしか見れない自然の織り成す風景に憧れる。高所恐怖症でなかったら…色々と登ってみたいのに(-_-;)2021/08/21
Kuppa
14
53人の山小屋番の方が書かれたエピソード集。山の四季、山での生活、山小屋の管理の苦労、登山客との触れ合い等等、それぞれ思いがあって、それぞれの方の山小屋や山との関わりが詰まっていた。共通しているのは、山への愛情。みんな山が好きで山での生活を楽しみ、大切にしている様子が伝わってきて、なんとも羨ましい。それにしても山小屋の管理って大変。山小屋を使うような登山はしないのだけど、今度山小屋に泊まってみたいなという気持ちが湧いてきた。2022/12/09
頭痛い子
8
自分も北アルプスの小屋番をしてたので、それを回想しつつ読んだ。小屋は登山する人の休憩場所、宿泊処など沢山の顔をもつが、小屋番の仕事は想像以上にキツイ。何がキツイって、好きなご飯を好きなときに食べれない、常に誰かと一緒(一人の時間がない)、へたすると40日休みがない、など。私は下界に戻ったとき自販機あるしコンビニあるし自分時間あるしで「天国!」と思った。だけど、北アルプスでテレビもなかったとこに住み込みして、濃密以上の時間を過ごした半年は、人生において、間違いなく最も思い出深い半年だった。2021/05/19