内容説明
陸封魚にとっての楽園は、また人里から隔絶した山人たちの世界でもあった…。そんな陸封界隈をさまよい、杣人と寝食をともにした山本素石が、おおらかで逞しく、ミステリアスで陰影に富む「山棲みの世界」を描いた傑作集。「ツチノコ幻談」「山里夢幻」「山棲み遥か」からなる3部作で、ツチノコ博士、山村民俗の語り部として名を馳せた素石の魅力が満載の書。挿画もオリジナルのまま完全復刊。
目次
ツチノコ幻談(ツチノコ談義;怪蛇襲来;ころがる・あたる ほか)
山里夢幻(志明院の怪;狐井戸の由来;狐にやられた話 ほか)
山棲み遥か(原生林周辺の隠れ里;炭山の日々;鈴鹿の樵夫 ほか)
著者等紹介
山本素石[ヤマモトソセキ]
1919年滋賀県甲賀郡(現・甲賀市)甲南町生まれ。天理教滋京分教会長、ノータリンクラブ会長などをつとめるかたわら、日本各地の山地溪谷を探訪し、山村と溪流釣りにまつわる数多くのエッセイ・紀行を世に送り出した。遍く全国に名を知られ敬愛された稀代の釣り師であった。本名・山本幹二。1988年京都市北区にて死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
61
ツチノコの話、山の怪異の話、そして山に生きる人々の話。読んでいるうちに著者と共に藪をかき分け渓流を遡り、山々の懐に分け入っているような心持さえしてくる。ツチノコや京都志明院の怪談や狐に騙された話、滋賀の口裂け女といった話は当然面白く夢中になって読む。ただそれ以上に面白いのが本書終盤山の人生の数々。明治の隠里から炭焼きに木地師といった今はもう無い職業の数々。特に炭窯を作る場面等、貴重な記録ではあるまいか。柳田国男の著作で触れられていた部分も実際の体験となっているし。読みながら、ふと山道を歩きたくなってきた。2019/02/28
CTC
7
9月のヤマケイ文庫新刊。著者は19年生まれで漂泊の絵付け職人にしてエッセイスト、天理教の滋京分教会長でもあった。同レーベルの『山釣り』は名著であるが『新編 渓流物語』は全くいけない。本書は大きく、“ツチノコ”“山の怪”“山の生活”の3章構成だが、隠れ里や炭山の生活を記す第3章の出来が圧倒的だ(1・2章はタイトルの通り、ややけばけばしい)。人里が便利になるにつれ、炭焼きを活計とした山里が廃れていく様は物悲しいが、経済的人口的限界を迎えた今の国土を考えると、非常に含むものがあるように感じた。2018/10/28
yamakujira
6
1985年に発行した本の復刊。「ツチノコ幻談」「山里夢幻」「山棲み遥か」の3部構成で、「ツチノコ幻談」はUMA捜索のあれこれが興味深い。著者本人をはじめ、こんなに目撃例があるなら、きっと未知の生物がいるに違いないと思いながら、「フィナーレ」が現実なのかもしれないと悄然とする。山の怪談奇譚6編の「山里夢幻」を箸休めにして、山村生活を活写した「山棲み遥か」は山人の声を聞こえてくる。通い詰めた鈴鹿山麓で炭焼小屋に泊まった紀行は民俗史の実体験だし、「廃村茨川紀行」では雄策さんの述懐が沁みる。 (★★★☆☆)2018/11/11
こけこ
1
不思議がいっぱいの本。どうにも説明ができない、表現できないものって本来いろいろいるんだろうな。2023/06/19