内容説明
冬の北鎌尾根で凄絶な最期を遂げ、井上靖『氷壁』のモデルとされた松濤明。第2次RCCを創設して日本のアルピニズムを牽引した奥山章。芳田美枝子は、風雪の北鎌尾根に消えた松濤を上高地で待ち続けた女性として『氷壁』のヒロインのモデルとなり、のちに奥山章と結婚して、戦後日本のアルピニズムの発展を見つめ続けた。松濤明、奥山章のふたりのアキラの知られざる登山史の断片を往復書簡で描いた話題作。
目次
『氷壁』とアルピニズム―松濤明と奥山章の想い出
北鎌尾根へ―北岳バットレスからの転進
待ち人来たらず―一人ぼっちの穂高越え
風雪のビヴァーク―北鎌遭難の検証と考察
蒼い星―松濤明の死、そして上京
エゴイスト―登歩渓流会と松濤明
影を追って―登歩渓流会と蒲鉾屋「神茂」
ふたたび山へ―松濤明の「戦後」
死ぬことで生きる―風化しない松濤明の面影
孤独と焦燥―第二次RCC創設へ〔ほか〕
著者等紹介
平塚晶人[ヒラツカアキヒト]
1965年、北海道生まれ。出版社勤務を経て94年よりフリーランスのノンフィクション・ライター。96年、「走らざる者たち」でNumberスポーツノンフィクション新人賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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カザリ
20
すごくいい本でした。往復書簡という形式がこんなに面白いものになるとは。もっと沢山の人に読んで頂きたい本です2020/01/25
hitotak
5
松濤明、松濤と生前関わりがあった山田美枝子という女性、その夫であった奥山章という3人の登山家について、書簡形式でかかれたノンフィクション。松濤と美枝子の関係、松濤の遺書が井上靖『氷壁』のモデルになったらしいということを知って読み始めたが、その部分は冒頭でさらっと触れているだけで、あとは三人の人生を賭けた凄まじい登山・登攀歴、生き様が書かれている。大学山岳部の華やかさ、戦後隆盛を極めた社会人山岳会、登攀一番乗りを目指して競い合う登山家たちなど、全く知らなかった登山界の戦後史も詳しく書かれて興味深かった。2021/05/14
yamakujira
4
松濤明の恋人であり、奥山章の妻であった美枝子、奥山と死別後は再婚して、おだやかな余生を送ったそうだ。再婚相手を看取ってから老人ホームで暮らす美枝子との往復書簡で構成する本書は、まず松濤とは相思相愛ではなかったことに驚き、単身で上高地に迎えに行って松濤の遭難を知らないまま中尾峠を越えて帰ったってことにさらに驚く。さらに、国体のスキー選手であり、後に北鎌も踏破するなど、美枝子の経歴にもまた驚く。登山史に名を刻んだふたりを回顧しながらひとりの女性の人生をたどり、彼女の強さに胸を打たれる。 (★★★☆☆)2021/06/01
いこ
0
山に生きたふたりのアキラについて、平塚晶人と山田美枝子が手紙のやりとりをする構成をとっている。そして、彼らについて語ることを通して、彼女の生き様も浮かびあがってきます。 「私はここで毎日この調理を繰り返す中で、一分という長さがどれだけ多くのことをできる時間か、ということを知ったのでした。」2021/12/30
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