内容説明
世界史は古代オリエントにはじまる。世界最古の文明の足跡を、今残る史料からどのように見つけ出すかその手法を講義形式で紹介する。
目次
第1部 歴史に接近する(シュメール史へのいざない;一九世紀的思潮とアッシリア学;年表をつくる;時代を区切る)
第2部 シュメールの王権(王の二大責務と王号;王の軍事権と祭儀権;王家の死者供養と姻戚関係;王妃シャシャ;王妃アビシムティ)
第3部 王家の組織と文書(初期王朝時代の王妃の家政組織;ウル第三王朝時代の公的経営体と神殿;職人・商人と道化師・聖歌僧;食料生産と料理;初期王朝時代の行政経済文書;ウル第三王朝時代の行政経済文書;ウル第三王朝時代の決算文書)
第4部 シュメールの社会(家族、女性;王妃の家政組織における任用;労働と身分・生活保障;差別と迫害)
著者等紹介
前田徹[マエダトオル]
1947年生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士課程東洋史学専攻中退。早稲田大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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月をみるもの
15
初期王朝時代は、社会の構成員への食糧(大麦)の支給は身分保証の意味合いが強かった。しかも権力を握っているのは、文字を操り記録を残すことのできる「書記」。なに、その共産主義社会って感じ。それが500年後の第三王朝時代になると、大麦の支給は労働の対価となり、会計簿の進化によって(戦闘による捕虜ではなく)債務奴隷がどんどんと増加していく。どうやら人類社会は、マルクス先生のお考えとは、まったく逆のパスを辿っていたようだ。世界中どこでも、文字で記述された歴史と、発掘された「モノ」が重なり始める時代の面白さは格別。2021/02/19
hal
11
大学の授業の西洋史概論で、著者が古代オリエント史を担当した時の講義ノートを元に構成されているらしい。内容的には、様々な史料から読み取れるシュメールの社会の研究の紹介である。このあたりを専攻に研究を進めたい人には良いかもしれない。楔形文字は、最初装飾文様だと思われていて、文字だと認識されて初めて解読されるようになったとか。2021/01/13
じゃくお
3
この本は古代メソポタミア史だけでなく、古代メソポタミア研究の歴史まで述べている。アッシリアで出土した書板から大洪水の記述があったことから、聖書文化圏の西洋人たちが一斉に研究を始めた。研究の背景に宗教が存在したことが、歪さを招く原因となってしまう。この顛末を記述するのは本書の序盤部分に過ぎないが、私としては非常に興味深い箇所であった。これだから歴史学は難しい。耐え難い事実をも受け容れねばならないから。2022/06/18
sho
0
「古代メソポタミア全史」に触発されて本書も手にとってみたが、大きな違いとして本書は古代オリエントの中でもシュメール人の都市国家に絞って、粘土板の記述をもとに王権や社会経済を考察する内容で、有り体にいえばかなりお堅い内容なので、王朝の変遷など高校世界史のワクワク感の延長線上で読むのは結構しんどいかもしれない。2021/03/12
ヨシツネ
0
豚肉の油脂が主な利用とはいえ普通に食べられていた時代だからどうしてそうなったのだろうかはほんとよくわからんが西暦のあたりではそういう地域も存在したとは聞いたような 宦官は新アッシリア期には大量だがウル第三王朝には政治的ではないとか 前4000は女性神だったニンが前3000には男性神になる宗教観の変化も面白い TSですよTS2020/12/13