内容説明
本書は、“時代”に翻弄され浮沈をくり返しながらも、自分の手で“時代”を創っていった原敬の生涯を、わかりやすく解説した。
目次
「未来」と「現実」の調和
1 賊軍・貧困・流転(零落する貴公子;苦学、そしてキリスト教;賄征伐事件;冷めた民権理論家;地方に目を向けよ;未来を見据えて;官界を流転)
2 「今日主義者」原敬(「獅子身中の虫」―陸奥宗光との出会い;立憲政友会結成;積極主義と政党改良;「情意統合」;「今日主義者」)
3 分水嶺に立ちて(原と山県有朋;普通選挙法案をめぐって;積極主義のゆくえ;戦後国際秩序と原内閣;原の遺書)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シロビ
4
今まで原敬についてのエピソードについて書かれた本を読む方が多かったので、時代の流れに沿って教科書のように書かれていて読みやすかった。第一次世界大戦時の首相だったのか。常に遠い未来を考えていて、凄いなぁと思います。暗殺されない未来がみてみたかった。2015/04/10
バルジ
3
原敬のコンパクトな評伝。紙幅の関係もありかなりざっくりとしているが、原の抱いていた政治思想の要点が記されている。原の根底にある「調和」の思想は急進論を排し、漸進的な政策を思考するものであり、情と理のバランスを常に思考していたその姿勢は、大政治家に必要なものだとつくづく痛感した。しかし首相となった原は言論界から冷ややかな評価(今日主義者とも呼ばれる)を受け芳しいものでなかったのは同時代における政治家評価の困難さを表している。著者の「時代の分岐点」による原評価の二分化という指摘は重い。2019/06/27
うどんさん
0
政党政治を目指した「理想的民主主義者」か、妥協による政権運営に終始した「保守的・現実的独裁者」か。分裂した二つの原敬評が生まれたのはなぜかという視点から原の生涯を簡潔にまとめる。原自身は一貫して「世界の大勢」を理解し社会の「調和」を保ちつつその着実な実現を目指す漸進論者だったが、こうした原の政治姿勢は桂園期にむしろ適合的であり、WW1後の変動の中では十分な見通しを得ないままであった点、それ故に目の前の短期目標の達成が強調され結果的に長期的視点に欠ける人物との評価を受けるに至った点等を説得的に論じている。2022/08/06