内容説明
大臣職を世襲した蘇我氏の「等身大」の姿とは、どのようなものだったのか。彼らは外戚関係の形成に尽力しつつ、群臣合議を主導して多数派工作を行うことにより、王権内で生き抜くことを模索した一族であった。しかし冠位十二階の制定で、結果的に蘇我氏が孤立化・独善化していくと、王族や群臣層の支持を急速に失っていく。本書は最新の王権研究の成果をふんだんに取り入れ、蘇我氏盛衰の経緯と要因について探っていく。
目次
大臣と合議制
1 蘇我稲目(系譜と出自;政治的台頭の背景 ほか)
2 蘇我馬子(六世紀後半の王権継承;蘇我系大王の誕生 ほか)
3 蘇我蝦夷・入鹿(推古の後継問題と蘇我氏の族長権争い/百済宮家と斑鳩宮家 ほか)
その後の蘇我氏
著者等紹介
佐藤長門[サトウナガト]
1959年生まれ。國學院大學大学院博士課程後期単位取得退学。博士(歴史学、國學院大學)。専攻、日本古代史。現在、國學院大學教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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庄屋之者
3
國學院大學教授佐藤長門氏による著作。 蘇我氏の出自や教科書ではほとんど触れられない蘇我稲目について知れたのは良かった。 佐藤氏が言うように、皇国史観への反省から皇室以外を中心に展開する今の日本史教育は正しいとはいえない。 歴史教育は実証主義の立場から行わないと、国民が歪んで育ってしまう。2020/03/27
メガネ@glglspectacles
1
崇峻天皇が殺された事件について知りたかったので手に取った。本書では、緊迫する情勢に崇峻天皇が対処しきれないと当時の支配層に判断され、幅広い支持を得た上で「王殺し」が実行されたという見解をとっており、なかなかシビアなんだな、と思うと同時に、どんだけ能力なかったんだよ、とも思ってしまった。 高校の教科書以外で歴史学の本を読むのは初めてだったので、史料の読解についての記述が面白かった。2021/10/01
ドビン
1
蘇我氏の権力掌握過程を詳細に述べ、しかも頭注が非常に詳しく、稻目、馬子、蝦夷、入鹿の時代の朝鮮半島、隋との関係の変化、さらには、当時の大王の権力の由来など、非常に参考になる書物。価格もリーゾナブルで、ページ数も比較的少ないが、それだけに丁寧に読みたくなる一冊だった。2018/02/06
うしうし
1
蘇我氏は「王権簒奪」すら行い得た巨大氏族であったと過大評価する立場を取らず、王権との外戚関係の形成や群臣合議の主導という「王権への寄生」の中で大臣職を世襲しえたと評価する立場で書かれた書籍。蘇我氏の歴史的な位置づけを、これまでより相対化する立論のように思えた。昔、マンガ「日出る処の天子」で読んだ人物名が次々に登場し、恥ずかしながら、このマンガで蘇我氏周辺の人々の名前を学んだのであるが、研究がここまで深化しているのかと驚いた。近年、飛鳥地域の発掘調査の進展に伴い、蘇我氏をめぐるさまざまな2016/10/25