内容説明
私はトラである。中国の東南部の山間地域に住むトラである。ヒトがたどった三千年にもわたる歴史を、私たち一族は見つめてきた。永い時間のなかでは、気候も変わり植生も変わる。野生動物とヒトとのかかわり方も、変わってきた。ヒトが私たちに畏れを抱いた時代もあった。ヒトによる開発が、私たちを追いつめていった時期もあった。トラとヒトとの関係の歴史を、エコロジカル・ヒストリーとして語っていこう。
目次
1 ヒトが来る前
2 ヒトと遭う
3 ヒトに畏れられる
4 ヒトに追いつめられる
5 大虐殺、その後
著者等紹介
上田信[ウエダマコト]
1957年生まれ。東京大学人文科学研究科修士課程修了。現在、立教大学文学部教授
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感想・レビュー
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榊原 香織
105
トラの目から見た中国南部の歴史(主に自然史) 生態環境史という面白い分野 今や絶滅寸前のアモイトラ。クマより危険だけど2025/11/18
Toska
22
「中国史」としては風変わりな内容だが、トラが語ってるんだからしゃあない、という妙な説得力(ずいぶん学のあるトラではある)。我々だって、トラの歴史を語れと言われたら困るだろう。中国大陸で数千年も続けられてきたヒトとトラとの角逐。かつては自然と共生できていた人類が近代に豹変したわけでは決してない。古代でも中世でも、ヒトは可能な限り自らのテリトリーを押し広げようとしてきた。だが、近代に入ってヒトが巨大な力を手にし、しかも「害獣」という概念が確立された時、トラにとっては真の悲劇が始まった…2025/12/18
蛇の婿
7
ざくっとした中国農村部の発展を山林部への人間の進出面から語るのがこの本の目的…でしょうか?こういう見方も出来ますよ、と言う感じ…これ別に中国であるべき理由も虎が語るべきである理由もないような…巻末に動物保護に関してちらっと書いてもありますがそれが主眼の本でも無いようで、うーん、なんだかなぁこれは…2015/01/05
in medio tutissimus ibis.
3
トラが著者の知恵を借りて人間の営みについて語っている体ですすむので、トラに身近な動植物の生態や種類については割と厳密な一方、人間はその活動とその結果だけ分ればいいという大雑把な扱い。年間を通して虎に殺される中国人は何百人もいないが、税制の関係上いないことになっている人口は何万人もいた様で、苛政は虎より猛しとはこのことか。2019/09/29
Yoshihiro Yamamoto
3
B 滅びゆくアモイトラの視点から中国の歴史(民衆史)を語るというちょっと変わった本。このような「動植物と人との関係を扱う歴史」をエコロジカル・ヒストリーと言うそうだ。16世紀までは、人は端境期に食料不足に直面して死亡率が高くなること、祖先の骨を気が吹き出す穴に埋めることが出来たなら、それが自分の骨にも感応して身体に気がみなぎること、マラリアには三日熱マラリア(瘧)・熱帯熱マラリア(瘴)など4種類があること、など、いくつかの面白いことを知った。2015/12/09




