出版社内容情報
グローバル的規模で、社会全体を巻き込むトータルな激変は歴史的には20世紀になってはじめて出現したといえる。本書で取り上げる第一次世界大戦によって引き起こされた変動は、まさにこの意味での史上最初の大転換である。
第一次世界大戦がもたらした社会への衝撃は、各国の政治・社会の指導層にとどまらず、多くの国民や地域社会の人々に新しい世界への転換を感得させ、それに対応する目標と方法を模索させた。そのなかでは転換を阻止し、以前の世界に押し戻そうとする激しい抗議や抵抗も起こった。本書はそのような模索の先導者ともいえるロシア・アメリカ・ドイツ・中国を取り上げ、それぞれの成果や破綻に、いまだ基本的構造や性格の特性が明確になっていない「現代」を理解するための手がかりを求める。
「総論 現代への模索」では、本巻のタイトルである1919年という年がもつ意義について述べる。そのなかで、第一次世界大戦前後の構造や本書の核となるパリ講和会議・ヴェルサイユ条約についても通史的に解説する。このあとに続く各章のポイントのみならず、本書では扱えない現代的諸課題も多く取り上げ、さまざまな視点から現代への考察を促す。
「1章 パリ講和会議とロシアの内戦」では、革命後のロシアの状況と周辺国の動向を描く。ロシア革命後、ソヴィエト政権やさまざまな反ボリシェヴィキ勢力があい争う一方で、第一次世界大戦からのロシアの離脱を恐れたイギリス・フランス・アメリカ・日本などの列強は干渉戦争を起こした。また、革命後はポーランド・フィンランド・バルト3国といった独立国家が誕生した一方で、ウクライナ・グルジア・アゼルバイジャン・アルメニアのように短命に終わった国家もあった。これらの国や関係者たちはロシア情勢をどのようにみていたのか、さらにパリ講和会議における「戦後」処理のなか、依然戦闘の続くロシアはどのように扱われたのかを概観する。
「2章 胎動する巨大国家アメリカ」では、パリ講和会議以降、明確に影響力を拡大していったアメリカ合衆国を扱う。アメリカを中心に大西洋規模で追求された戦後平和に向けての政治的、経済的、あるいは文化的動きを、その内部にみられた利害対立やナショナリズムの矛盾を浮き彫りにして論じ、アメリカが主導する1920年代の大西洋世界を描ききる。
「3章 ナチズムという選択」では、ドイツ帝国の崩壊、ヴァイマル共和国の成立、そしてナチス・ドイツの到来というドイツ激動の道のりをたどる。共和国の議会制民主主義の担い手で実務者でもある国会と政府の役割、さらに既存の諸政党の支持基盤や組織構造の特徴などを分析・検討し、ナチ党が異様ともいえる急速な拡大をはたした理由に迫る。
「4章 近代国家像の模索」では、1919年に発足した中国国民党の指導者たちの試行錯誤をみる。辛亥革命後の中国で全国政権を確立する過程で、彼らは中国がとるべき政治体制についてどのように考えていたのか、またその際、先進の西洋型民主主義をどのようにとらえていたのかを検討する。
内容説明
1919年その時日本は第一次世界大戦に連合国側で参戦し、戦勝国としてパリ講和会議に参加しました。翌年設立された国際連盟において、日本はイギリス・フランス・イタリアとともに常任理事国になりました。連盟設立に際し、日本は規約に人種平等条項を入れることを要求し、欧米諸国を驚かせました。
目次
総論 現代への模索
1章 パリ講和会議とロシアの内戦(ロシア革命と第一次世界大戦;内戦のロシア;講和会議の始まり;コルチャークの進撃と挫折;ソヴィエト政権は生き残る)
2章 胎動する巨大国家アメリカ(「戦後」世界の行方;ヨーロッパからみたアメリカ;移民を制限する国家;秩序の形成をめざす共和党政権の論理;崩壊からニューディールへ)
3章 ナチズムという選択(大衆的政治動員時代の幕開け;新憲法・講和条約をめぐる抗争;世界恐慌と新たな未来像の模索)
4章 近代国家像の模索(普遍と特殊;民主主義への懐疑;新たな制度の模索;伝統と先端;後継者たち)
著者等紹介
木村靖二[キムラセイジ]
1943年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。専攻、ドイツ近現代史。東京大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ピオリーヌ
崩紫サロメ
MUNEKAZ