内容説明
ムスタファ・ケマル・アタテュルクは第一次世界大戦で敗北し崩壊寸前のオスマン帝国でアナトリアとルメリーのトルコ人を救済すべく祖国解放運動を展開し、新たにトルコ共和国を樹立して初代大統領となった人物である。彼は戦勝国のトルコ人を否定するような過酷なセーヴル条約を破棄させ、ローザンヌ条約を締結してイスラーム的オスマン帝国と決別したトルコ人の近代的国民国家を成立させた。さらに彼の指導したトルコ革命は、住民交換により人口の9割以上のイスラーム教徒を有しながらも政教分離の西欧的世俗国家を生み出したのである。
目次
トルコ国民の父
1 かげりゆくオスマン帝国
2 祖国解放への道のり
3 トルコ共和国の成立と整備
4 近代国家をめざして
著者等紹介
設樂國廣[シダラクニヒロ]
東京教育大学大学院文学研究科修士課程東洋史専攻修了。専攻、オスマン朝史、トルコ共和国史。現在、立教大学名誉教授、東洋文庫研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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崩紫サロメ
23
小笠原弘幸編『トルコ共和国:国民の創成とその変容』の中で本書について2016年刊にも関わらず「近年の研究を参照していない古典的な人物伝であり、事実関係・年代等の誤りも多く利用には注意が必要」(p.17)と言及されていたので、逆に気になって読んでみた。確かに、近年の研究においてアタテュルクの改革をオスマン帝国からの連続性の中で捉える動きが全く反映されていない。ただ、古典的なアタテュルク像というものに触れる機会も少なくなっていることを思うと、それなりの意義もあるのではないかと思った。2021/02/15
新田新一
9
世界史は高校の時に力を入れて勉強したはずなのに、ほとんど忘れており、本書に出てくるケマル・アタテュルクのことも覚えていません。ケマル・アタテュルクは混沌とした中東で近代トルコの基礎を作り上げた人物です。トルコの近代の歴史は複雑で、読んでいると頭がこんがらがってきます。イギリスやフランスなどの列強、イスラム教の強い影響などを脱して祖国の土台を作り上げたケマルの功績には、心を打たれます。最大の功績と思えるのは、イスラム教を政治の場から排除して、政治と宗教を分離したことです。2023/08/30
ジュンジュン
7
名は体を表す。本名ムスタファ、学校で同名教師からケマル(優秀)と呼ばれムスタファケマルに。長じて軍人となり軍功を重ね、パジャ(将軍)の称号を受けケマルパジャ。さらに解放戦争を指導、新生トルコ共和国の初代大統領になると、議会からアタテュルク(アタが父、テュルクがトルコの)の尊称を贈られ、ケマルアタテュルク(偉大なるトルコの父)となる。名前の変遷がそのまま経歴であり、彼の経歴がそのままトルコ近代史の歩みと重なる。2020/04/27
さとうしん
7
トルコ共和国成立後の文字改革などの近代化の詳細のほか、祖国解放運動以来の戦友・同志を次々と切り捨てていく独裁者としての側面も描く。個人的に興味深かったのは、即位前のメフメト6世と懇意であったということと、ローザンヌ条約締結後にギリシアとの和平が成立した際に、イスメト首相とギリシアのヴェニゼロス首相との間に信頼関係が成立し、ヴェニゼロスがイスメトをノーベル平和賞候補として推薦したという話。中公新書の『物語近現代ギリシャの歴史』では、ヴェニゼロスがひたすらトルコにしてやられた話しか載っていなかったと思うが。2016/09/06
中島直人
6
(図書館)読了2019/02/23
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