内容説明
室町時代の“国家の最高権力者”は、天皇でも将軍でもなく、「室町殿」だった!幕府がもっとも機能した4人の時代(三代義満、四代義持、六代義教、八代義政)を通して、室町殿・幕府の実力を、最新研究から解明する!
目次
「室町殿」とよばれた四人の足利将軍
第1部 室町幕府の運営体制(室町殿と訴訟―室町殿は、訴訟・紛争にどのように対処したのか?;将軍と天皇の関係―足利家と天皇家の一体化は、どのように進行したのか? ほか)
第2部 室町幕府と都鄙(幕府と在京大名―幕府の全国支配と「在京大名」の重要な役割とは?;幕府と東国情勢―「鎌倉府」の盛衰を左右した幕府・鎌倉公方の対立 ほか)
第3部 室町幕府と宗教(幕府と武家祈〓―室町殿の“身体護持”を担う門跡寺院と護持僧;幕府と五山―“巨大企業体”のような組織だった禅僧集団 ほか)
第4部 室町幕府を取り巻く社会状況(幕府と室町文化―幕府とともに新興文化を支えた芸能者・被差別民;幕府と土一揆―「土一揆」は、中世社会における「訴訟」行為だった ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
105
江戸期のような法律も制度も組織も整ってない室町時代に、将軍を兼ねる足利家家長たる「室町殿」の個人的権威に依り従う形で政治が行われていたとは。こうした手法はトップが有能で強ければ機能するが、無能だったり権威がなければ失速する。三代義満が確立したやり方は義持、義教までは何とか継承できたが、応仁の乱以降に将軍の権威が失われると幕府が事実上消滅した経緯がわかる。武士と朝廷や寺院の結びつき、関東公方や守護大名の実態など足利政治のカオス的状況を理解する助けになる。法制と官僚制による行政がなければ政治的安定はないのだ。2022/05/31
MUNEKAZ
19
本書の安定期室町幕府とは義満・義持・義教・義政前期まで。公武に君臨した「室町殿」の下、各権門が絶妙なバランスを取りながら、京都で政治が営まれた期間を指す。最新研究が目白押しで大変面白いのだが、個人的には所謂「守護大名」が存在しなかったというのが衝撃であった。在京して幕政に協力する「大名」に、「守護」職が付与されただけであり、かつて言われたような「守護が大名化して守護大名」という図式は成り立たないとのこと。またこの時代の「大名」は「だいみょう」ではなく、「たいめい」。江戸時代のそれとは似て非なるものである。2022/04/28
組織液
17
「室町殿」義満・義持・義教・義政前期の安定期室町幕府の最新研究がまとめられています。個人的な関心は大名(たいめい)ですね。「守護が大名化して守護大名になったのではなく、大名が守護職に任じられていた」「在京大名は分国だけでなく、分国外の地域にも所領支配や取次役としての交渉を通じて、影響力を持っていた」といった点は絶対に抑えておきたいです。やっぱり守護→守護大名→戦国大名とした図式や、色分けされた領国のほうが圧倒的に分かりやすいですからね…。呉座先生の土一揆の章も非常に面白かったです。2023/09/28
フランソワーズ
10
義満から義政初期までの室町時代安定期の研究を多方面から解説した”刺激的”な概説書。研究の現場ではすでに廃れて久しい通説が、このような形で修正・紹介されるのがうれしい。例えば大名。「だいみょう」ではなく、「たいめい」。また守護大名という用語への疑義や、在京大名という存在など、盛りだくさん。2023/04/15
お抹茶
2
足利義満,義持,義教,義政は,足利将軍家の家長であり武家政権の長であるとともに,公家・武家・寺社によって運営される中世国家の最高責任者として機能した「室町殿」。室町殿としての権力体制を維持するために,権威の源泉となる天皇家の維持向上に努めていく。北山文化と東山文化の中間である義持・義教期に,幕府の主導下で文化が規範化・年中行事化され,美術工芸品コレクションが形成されたという点も重要。この時代は大河ドラマで取り上げられることが少ななく断片的な知識しかないが,室町時代は政治的にけっこうおもしろいかもしれない。2022/02/01
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