出版社内容情報
本当に現在の大学生の学力は低下しているのだろうか? 本書では,できるかぎりたくさんのデータを集め,それを分析することによって,現在の大学の実態に迫ります.
目次
1 大学生の学力低下の実態(俺たち、ゆとられちゃってますから;いまどきの大学生 ほか)
2 ゆとり教育は学力低下の原因か(ゆとり教育犯人説;「円周率=3」 ほか)
3 理工系離れを考える(理工系離れのルーツを探る;理工系への関心が下がる理由 ほか)
4 教育の今後を考える―いま何をすればよいのか(これからの人口推計をみる;上位の大学もエリート校でなくなる ほか)
5 望ましい教育システムとは(私費負担が多い日本(国ごとに見る予算の問題)
学ぶ順序や時期を見直す)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kenitirokikuti
10
図書館にて。2008年刊行。著者は応用数学専攻で、企業の研究所でICカードのセキュリティなどをやって、その後2004年から大学で情報と数学を教えるようになったひとのようだ。ゆとり教育で大学生がアホになったとか言われてた頃だな。まぁ、データを見れば、学生の物理・数学離れは70年代後半から進行しており、また教室にて大学生が「ゆと」ったのは事実であるが、若者人口が減ったのに大学のキャパが変わらなかったからである。そのほか、女子大生が増えたけども、その工学部選択率が非常に少ないこと。…2024/10/10
Riopapa
3
大学のみならず高校でも、一校一校単位で見れば、学力は低下するのは、当然といえば当然。全ての学校が子供の減少率に合わせ、定員を削ればいいのだろうが、それも難しい話。2015/06/22
yakumomutsuki
2
ざっくりいうと,大学の定員は変わらず,しかし少子化によって「天才」と呼ばれる人の数が少なくなった.すると,定員を充足するために,平凡な学生がその定員に入ることになる.つまり,「分数ができない大学生」が生まれた理由は,質を考慮して学生を選別しているのではなく,定員をただ充足するために上位から定員まで切っている.数が少なくなれば,出来る学生の人数も減る.割合でなく,量だから,質が下がるのは必然.もちろん,それ以外にも大学の学部拡充など要因もあり,かつ学力低下は生じていない,という指摘も有益.2012/02/28
Ucchy
1
データを基に教育を論じる。学力低下の原因はゆとり教育ではない。少子化にもかかわらず大学定員が増え、従来だったら入学できなかった学力の学生が入学できるようになったこと。ゆとり教育で学力が低下したという証拠はない。理工系離れは工学部を志向しない女子の大学進学率上昇が原因。学力低下の解決策は少子化に応じて定員を減らすことしかない。定員が多過ぎることはきめ細かい指導を難しくする要因でもある。AO入試は学内での学力格差を広げ大学教育を難しくしている。データに基づく議論が説得的だった。2015/08/12
liebebuch
1
様々なデータを用いた論証は「圧巻」の一言。「ゆとり世代は頭が悪い」、「ゆとり教育が子供をダメにした」という「批判」を誰もが聞いたことがあるはずだが、その思い込みをバッサリ切ってくれる。悲しむべきは、学術の世界ではこういった客観的な論証は当然なのに、メディアを中心とした「ゆとり批判」は論者の主観に寄り過ぎていることかもしれない。ゆとり教育の第一号世代として「よくやってくださった」と言いたい。2011/05/04