出版社内容情報
丸山眞男没後10年を記念して、現在159刷になる超ロングセラーを読みやすい新組み新装版で刊行します。
内容説明
本書は著者が戦後発表した政治学ないしは現代政治の問題に関連する主要な論文を収めた。増補版発行に当り、上下両巻を合本したほか、旧版後記にのべたような編纂趣旨を規準として三論文を新たに追加し、その代り旧版上巻にあった比較的に短い二篇を落した。
目次
第1部 現代日本政治の精神状況(超国家主義の論理と心理;日本ファシズムの思想と運動;軍国支配者の精神形態 ほか)
第2部 イデオロギーの政治学(西欧文化と共産主義の対決;ラスキのロシア革命観とその推移;ファシズムの諸問題 ほか)
第3部 「政治的なるもの」とその限界(科学としての政治学;人間と政治;肉体文学から肉体政治まで ほか)
著者等紹介
丸山眞男[マルヤママサオ]
1914年3月22日大阪に生まれる。1937年東京大学法学部卒業。1974年東京大学法学部名誉教授。1996年8月15日逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
94
何度目かの再読です。日本の社会や政治がおかしいと感じるときに読み返す1冊です(そのほかに神島二郎「近代日本の精神構造」藤田省三「天皇制国家の支配原理」もあります)。やはり最初の「超国家主義の論理と原理」は何度読んでも素晴らしいと感じる論文で、ナチスや戦前の日本、あるいは今のアメリカなどを見ているとその状況が良く理解できます。ただこの本ではほかにかなり専門的な論文も含まれているので、この論文を中心にした岩波文庫版を読んだほうがいいのかもしれません。2019/02/04
たかしくん。
16
有名な本ですが、なかなか骨太で! 第二次大戦後の著作なので、戦前の軍国主義、ファシズム、ソ連の共産主義など、古い話だけど今でも話は通じると思いますね。特に、ファシズムの部分は、少し前のトランプ政権に通じるかも。あんな無理難題も言い続ければ、熱狂的な支持者によって真実とされてしまう危険な匂いは、「ヒトラー万歳」と変わらないような。。2021/03/21
風に吹かれて
12
近頃の国会の論戦を見ていると、内閣はスローガン的な発言を行ったり、憲法に関する長年の研究の成果を単純化したり無視したりして、ある方向へ世論を導こうとする言説が目立つ。マスコミも公正無私を気取っていて政治に対する批評性に弱い。日本ほど立場を鮮明にしない新聞がいくつも存在する国はなく、五十年以上も前に書かれた論文は、現在の日本の政治状況を解き明かしているようだ。『大日本帝国の「実在」よりも戦後民主主義の「虚妄」の方に賭ける』と言う丸山の数々の論文は、今こそ読み直す意味があると思う。2016/01/24
左手爆弾
9
何度も何度も頷いた。何度も何度も首をひねった。そして何度も何度も変わらない日本の姿を歎いた。ここに収められた論文の多くは、現代日本でもよく通じる問題である。筆者の洞察は鋭く、日本人の根本的な問題点を鋭く描く。そしてその分析を「古臭い」と捨ててしまえないところが最大の問題点である。本書でも、他の日本論でも構わないが、きちんと読み議論していくこと、そこからしか始まらないのではないか。本書の出版から40年が経とうとしているが"現代"政治の思想と行動が我々に求められることに変わりはない。2012/04/12
てれまこし
5
欧米社会を比較の物さしとして、日本の民主政の欠陥が抉り出される。結果として日本の「不足」「欠如」ばかりが取りざたされる。知識人の悪癖ではあるが、丸山の場合は、この欠如の最たるものが人格的内面性である。社会関係からは自律的な内面世界が成り立つ素地が日本には欠けていることが問題視される。政治学者は単に物知りなだけでなく、まさにこの内面的自律を意識的に作り出そうとする人格者として捉えられる。かつては宗教が果した機能を科学が、牧師が果した役割を知識人が果たすことが期待される。この自負が今となっては新鮮ではある。2018/06/20