出版社内容情報
懐良親王(1329年?から1383年)南北朝時代の皇族。
九州が歴史の牽引力となったり、新しい時代のさきがけとなったりしてきた事例は枚挙にいとまない。本書は、後醍醐天皇の皇子として征西大将軍に任ぜられた懐良親王の生 涯をたどりつつ、南朝を強力に支えた九州の南北朝時代の特質を描き出す。
目次
序章 懐良親王と九州の南北朝時代
第1章 懐良親王の九州下向
第2章 伊予国忽那島時代・薩摩国谷山時代
第3章 肥後国菊池時代
第4章 追風としての観応の擾乱
第5章 大宰府征西府の全盛時代
第6章 征西府の衰滅過程
第7章 懐良親王の精神世界
終章 九州南朝の終焉
著者等紹介
森茂暁[モリシゲアキ]
1949年長崎県生まれ。1975年九州大学大学院文学研究科博士課程中途退学。九州大学文学部助手、京都産業大学助教授、山口大学教授を経て、福岡大学人文学部教授。文学博士。専攻は日本中世の政治と文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
8
懐良親王の評伝。南北朝時代の九州を席巻したこの人物を、森先生が手堅くまとめている。懐良周辺の人々の動きが興味深く阿蘇氏や少弐氏など一族の内訌に揺れる家もあれば、菊池氏のように南朝に全てを賭けた家もある。その中でも特に印象的なのは、吉野からずっと懐良に付き添った五条頼元の一族で、後に大友・立花と主君を変えながらも、懐良についての史料を現代まで伝えてくれているのは感動的。また幻に終わった明との通交など、大陸との玄関口である九州ならではの部分も面白い。2019/09/16
金監禾重
7
懐良親王だけでなく様々な勢力を解説していて、九州南北朝時代の概要をこの一冊でつかむことができる。先行研究川添昭二が巨大。懐良親王は未成年の時から瀬戸内海に放り出されるのだが、肥後に入って安定するまで10年以上かかる。その間、資料が残る範囲では、懐良補佐集団が広く支援を呼びかけるという様子がない。異常に阿蘇惟時に執着するが、惟時は南朝に全てを賭けるつもりはなく事態が進展しない。補佐集団を無能と感じる。海上を迂回してやっと薩摩に上陸、また数年かけて肥後に落ち着く。2023/10/02
keint
5
征西府として九州にに派遣された後醍醐天皇の子である懐良親王について、四国時代から薩摩上陸、菊池時代から征西府の最盛期とその衰退を解説している。 2句のみしか現存していない短歌を用いて、懐良親王の心性についても触れられていた。 懐良親王だけではなく、九州の南北朝時代の情勢を知るのにもうってつけの書籍である。2019/09/11
shrzr
0
懐良親王の評伝と銘打っているが、南北長期の複雑な九州政治情勢を資料に基づき丹念に検証する内容。2022/10/16