内容説明
武士の時代にあってはただの「お飾り」、あるいは「文化の担い手」でしかなかったとされてきた天皇と朝廷。しかし、実際は社会秩序の維持に重要な役割を果たし、武家もまたその機能を利用し守るために行動した。本書では、天皇・朝廷と武家との交渉の現場を描き出し、交渉人となった公家衆「伝奏」の活動に注目する。鎌倉時代から江戸時代末期まで、朝廷と武家との関係を支えた彼らは、一体どのような存在だったのか。
目次
武家と公家をつないだ人々
第1部 鎌倉時代―関東申次の誕生と活躍(関東申次成立前史;関東申次の成立;関東申次の展開と終焉)
第2部 南北朝・室町時代~戦国・織豊期―関東申次から武家伝奏へ(動乱期の公武関係を支えた公家たち―「武家伝奏」の誕生;足利将軍家に仕えた公家たち―戦国期の武家伝奏と昵近衆の活躍;織田・豊臣期の武家伝奏)
第3部 江戸時代―近世武家伝奏の活躍とその終焉(近世の武家伝奏の登場;近世中後期の武家伝奏の活動と幕府役人観;近世朝廷の武家伝奏から維新政府の弁事・弁官へ)
著者等紹介
神田裕理[カンダユリ]
1970年生まれ。1993年日本女子大学文学部史学科卒業。1998年日本女子大学大学院文学研究科史学専攻博士課程後期満期退学、修士(文学)。中世内乱研究会副会長、日本史史料研究会研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Teo
2
武家伝奏の通史、非常に興味深く読んだ。これまでそう言う役割があると言う事しか知らず、具体的に誰がやっていたのかも知らなかった。漫然の中級貴族程度かな、武家の威勢を背景にして中級貴族のくせに威張っていたのかなどと言う程度。 当然ながら時代によって誰がどんな役割を担ったのかは変わっている。大臣家も武家伝奏をやっていた時代があったのか。2018/05/23
中将(予備役)
1
武士の時代の公武関係の通覧。朝廷の権威を取り合う室町期が特に興味深かった。一般向けで読みやすい。2022/06/19
CJ
1
時代順にとりとめなく。・鎌倉時代に関東申次を務めた西園寺一族に、南朝が北朝の皇族を連れ去ったときの践祚の際に急遽「治天の君」となった広義門院こと西園寺寧子が出て来て、というかまさに嫡流の公衡の娘で、そうかそこが繋がるのか、となった。・足利義稙とともに流浪していた公家がいたのは熱い。・織豊期はそんなに無茶なことはしてないどころかかなり穏当。・薩長は本当に一会桑が嫌いだったんだなあ。・維新政府で役職がなくなるのは当然とはいえ、武家伝奏だった個人まで完全に排除されたのは理不尽だなと思った。などなど。2018/02/26
tohoho
0
朝廷と武家政権が交渉を行う際に朝廷側の窓口となった役職が伝奏だが、室町期には武家伝奏の武家とは幕府・将軍のことで武士という意味で使用することは基本的にないとある。他に南都伝奏、賀茂伝奏、神宮伝奏などがあったと。2019/07/31
なん
0
近世につては、幕府側である高家についても調べたい。2019/07/14