出版社内容情報
歴史的研究は、未来への重要な示唆を投げかける。今後の研究蓄積のための礎となるマニフェスト。本書は、環境政策に対して、歴史的視点からの分析を試みるものである。環境問題の研究は様々な学問分野に広がっていったが、政策の誕生背景、政策過程、その後の展開を丹念に解き明かした業績はまだ少ない。今日の複雑な環境問題の諸相を理解し,環境政策の将来像を構想するためには,政策の来歴の解明が必要である。本書では環境政策史の理論的検討と,異なる時期や地域を対象としたケース・スタディを展開し、多様な環境政策史研究の方向性を示す。
はしがき
第1章 環境政策史という視座――「仕掛け」としての意義(喜多川進)
1 環境政策研究における歴史的視点の提唱
2 視座としての位置づけ
3 柔軟さの意義
4 「仕掛け」としての環境政策史
5 典型的研究例
6 歴史的回帰の重要性
第2章 環境政策史における社会モデル――「時間」をいかに変数にいれるのか(佐藤圭一)
1 なぜいま「環境政策史」なのか
2 「環境政策史」=「環境政策」+「時間」
3 環境政策史研究の社会モデル
4 「時間」をモデルに組み込む
5 「時間」のモデル化で拓かれる地平
第3章 1950年代英領東アフリカの農業開発とエコロジー――植民地科学者からみた開発と環境(水野祥子)
1 イギリス植民地における開発と環境
2 第二次世界大戦前後のイギリス帝国における開発と科学
3 EAAFROにみる開発アプローチ
4 アフリカの農業開発とエコロジー
5 植民地開発における重層性
6 ポストコロニアル期の「開発」
第4章 訴訟過程と環境政策史研究――スネイルダーター事件における政府の訴訟活動から(北見宏介)
1 訴訟過程と政策をめぐる政府内対立
2 スネイルダーター事件の概要
3 政府からの書面と提出の背景
4 スネイルダーター事件の恒常性と特有性
5 訴訟活動と環境政策史研究
第5章 国民投票後のスウェーデンのエネルギー政策――脱原発のための施策は十分だったのか(伊藤 康)
1 スウェーデンは迷走したのか?
2 スウェーデンにおける電力事情
3 原子力廃棄に関する国民投票までの状況
4 1980年代のエネルギー政策の概要
5 脱原発のための具体的政策
6 脱原発のための施策は十分だったのか
第6章 環境課徴金制度の挫折――オランダのミネラル会計制度の場合(西澤栄一郎)
1 先駆的な経済的手法はなぜ成功しなかったのか
2 オランダにおける家畜糞尿の問題
3 家畜糞尿政策の展開
4 ミネラル会計制度(MINAS)
5 EUの硝酸塩指令
6 欧州委員会との攻防と制度の終焉
7 制度導入をめぐる政府と農業者の対立
8 顕在化した運用上の問題
9 養豚・養鶏部門に効果的でなかった制度
第7章 ドイツ・脱原発政策と政治の変容――パースペクティブ拡張の試み(小野 一)
1 変化のなかの原子力政策
2 赤緑連立の展開と脱原発合意
3 メルケル政権下の原子力政策
4 政治的構造変化の諸相
5 EUの放射線防護対策の展開
6 脱原発研究の転換点
第8章 環境配慮のための法制度の推移――漁業法と農薬取締法にみる環境配慮(辻 信一)
1 法制度に基づく環境配慮
2 漁業法の発展と環境法化
3 農薬取締法の発展と環境法化
4 漁業法と農薬取締法の環境法化の比較
付録 環境政策史研究会の歩み
あとがき
索 引
西澤 栄一郎[ニシザワ エイイチロウ]
編集
喜多川 進[キタガワ ススム]
編集
内容説明
本書は、環境政策に対して、歴史的視点からの分析を試みるものである。環境問題の研究は様々な学問分野に広がっていったが、政策の誕生背景、政策過程、その後の展開を丹念に解き明かした業績はまだ少ない。今日の複雑な環境問題の諸相を理解し、環境政策の将来像を構想するためには、政策の来歴の解明が必要である。本書では環境政策史の理論的検討と、異なる時期や地域を対象としたケース・スタディを展開し、多様な環境政策史研究の方向性を示す。
目次
第1章 環境政策史という視座―「仕掛け」としての意義
第2章 環境政策史における社会モデル―「時間」をいかに変数にいれるのか
第3章 1950年代英領東アフリカの農業開発とエコロジー―植民地科学者からみた開発と環境
第4章 訴訟過程と環境政策史研究―スネイルダーター事件における政府の訴訟活動から
第5章 国民投票後のスウェーデンのエネルギー政策―脱原発のための施策は十分だったのか
第6章 環境課徴金制度の挫折―オランダのミネラル会計制度の場合
第7章 ドイツ・脱原発政策と政治の変容―パースペクティブ拡張の試み
第8章 環境配慮のための法制度の推移―漁業法と農薬取締法にみる環境配慮