出版社内容情報
暴君ネロの気紛れさえゲームのように楽しむ,美と快楽の信奉者ペトロニウス.一本気なその甥ウィニキウスは,リギ族の王女への恋からキリスト教に心を開き,やがてそのことがペトロニウスの運命をも変えていく.爛熟期の帝政ローマを舞台に,愛と暴力,信仰と頽廃が入り乱れて織りなす壮大な歴史ロマン.新訳. (解説 辻 邦生)
内容説明
放火犯はだれだ。民衆の怒りははけ口を求めて荒れくるう。列強の圧制に苦しむポーランド同胞への思いを、迫害されるキリスト教徒に託したこの作品は、発表と同時に熱狂的歓迎を受け、二七カ国語に翻訳された。はたして「心の勝利」は成るか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
87
キリスト教の苛烈なまでの迫害とローマ人の身勝手な狂的な憎悪には胸が苦痛で潰されそうになる。そして作者の故国、ポーランドや第二次世界大戦が引き起こした事と重ねると余計に。しかし、キリスト教徒である牢番とヴィ二キウスに通じた信頼、牢でのリギアとヴィニキウスの結婚、ペトロとサウロがローマに戻ってきた理由、火刑に処されるグラクウスの赦しとそれによって改悛し、殉教したキロンが最期に見せた笑顔、リギアを助けるために水牛と戦ったウルススに涙で目が熱くなる。同時にポピュリズムに走ったネロ皇帝の空虚すぎる死は余りにも憐れだ2017/07/11
NAO
65
この物語の中で、ペトロニウスがネロの寵臣でありながらネロの言動よりも自分の自由の方を尊重する人物だったということは、重要なキーポイントとなっている。ペトロニウスキリスト教徒にはならなかったが、ウィニキウスにはあくまでも好意的で、彼の恋を後押しした。また、最終的にはネロの不興を買うが、死刑を言い渡される前に自らの命を絶って、ネロに一矢報いる。最後の最後まで、自由人であり続け、ネロの思いのままにはならなかった。最後までかっこいいペトロニウスだった。 2021/09/08
かわうそ
30
文庫本3冊という分量とキリスト教弾圧という重いテーマに腰が引け気味だったけど、描写はエンタメ色強めで読みやすく波乱万丈の展開もあいまって読み通せないのではという心配は杞憂だった。立ち位置の善悪を問わず登場人物たちが気持ちいいぐらい自らの欲望に忠実なのが今となってはむしろ新鮮でそれが作品の力強さにつながっている。面白かったです。2018/07/26
seacalf
24
100年以上読む継がれている傑作には、心を震わせてくれる何かがある。 皇帝ネロの狂気とティゲリヌスが行う途方もない迫害シーン、キロンの叫び、競技場でのウルスス、 そしてペトロニウスのあのシーン!読み応えあるシーンがたっぷり!読まれるべし。 渦巻くエネルギーに圧倒されて、むさぼる様に読むこと間違いなし。 時間に余裕がある小説好きの方はぜひ。 2016/08/11
春ドーナツ
22
「本当に」波乱万丈な物語で、最後まで「どうなっちゃうの!?」という一途な想いが途切れることはなかった。あまりにも凄かったので、喫茶店支払い時から、今に至るまで身体が「ふわふわ」している。注意力散漫を引き起こす陶酔。以下、個人的な謎解き。下巻266頁でついに一つの謎が解ける。題名の話。「クオ・ワディス・ドミネ?」と使徒ペテロは問いかける。ラテン語で「主よ、どこへ行かれるのですか」の意味だそうです。解説により、第二の謎、作者の来歴を知る。出生地はポーランド(当時大国によって分割統治されていた)。1896年刊。2018/07/03