内容説明
本書は、キェルケゴールの思想上の変化にとって大きな転換を刻む1848年の宗教的体験に関してこれまでの研究とは対照的な見解を提示することを通じて、実存的思想家としてキェルケゴール像を刷新しようとする野心的研究である。
目次
序章 キェルケゴールの生と思想
第1章 キェルケゴールにとって一八四八年とは―主題とテーゼ
第2章 方法論的考察
第3章 信仰の模索―宗教的体験までの生と思想
第4章 信仰の哲理―宗教的体験の契機としての『死にいたる病』
第5章 信仰の確信―一八四八年の宗教的体験
第6章 信仰を生きる―一八四八年以降の生と思想
終章 実存的思想家としてのキェルケゴール
著者等紹介
鈴木祐丞[スズキユウスケ]
1978年北海道生まれ。2009‐2011年コペンハーゲン大学セーレン・キェルケゴール研究センター研究員。2013年筑波大学大学院人文社会科学研究科哲学・思想専攻、博士(文学)。現在、秋田県立大学助教(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さえきかずひこ
12
1848年にキェルケゴールが得た宗教的体験を軸に、彼のキリスト教信仰の変容を著作(主に『死にいたる病)と日誌journal を繊細かつ緻密に読み解くことで明らかにする労作。本書を読むことでキェルケゴールが42年の生涯をいかに燃やし尽くしたかということも、きわめて自然に伝わってくるようにまとめられている。彼特有の術語についても、詳細かつ丁寧な定義がなされており、専門外の読者でも意欲的であれば、興味深く読めるだろう。最後には、著者の訳書にも通じる、研究対象への篤実かつ誠実な、深度ある姿勢が浮かび上がってくる。2018/05/31