出版社内容情報
ホロコーストを重要史実と位置づけ記憶の継承をめざす「ホロコースト意識」は、段階的に発展してきた。戦後数十年間の無関心、1980年代から活性化した教育、90年代に爆発的に高まった関心。今ではホロコーストがテーマの小説や映画が毎年のように作られている。しかしそれは陳腐化(工場での大量生産のような虐殺というイメージ、アウシュヴィッツとの同一視、生存者の感動物語)や悪用(ホロコースト否定論、ヒトラー礼賛)にも結びついた。
関心の高まりだけでなくその反動にも目を向け、ホロコースト意識を歴史研究の成果に接続することが必要だ。本書はこうした問題意識にヒストリオグラフィー(歴史学の歴史)の世界的研究者が応えたものであり、領域横断的な最新研究を統合してホロコーストを描き直している。
ホロコーストは本当のところ、どうして起きたのか。私たちはなぜそれを矮小化してしまうのか。ヨーロッパ各国の協力は、実際どのくらいの規模だったのか。ホロコーストに教訓はあるのか。
ホロコーストの歴史は収容所の解放で終わらない。ナチ礼賛の極右が台頭し、「ヒトラーは良いこともした」と言われ、ユダヤ人国家がガザでの虐殺を非難される現在と、それは連続している。「ヒトラーは否定されたのではなく、打ち負かされたのだ」。終戦時に放たれたこの言葉が、今ほど深刻に響く時はない。解説・武井彩佳。
内容説明
知識が普及するほどストーリーとして陳腐化にさらされるホロコースト。最新研究の統合によって歴史を叙述し直し、現在との連続性を考察する。
目次
第一章 ホロコースト以前
第二章 ユダヤ人への攻撃、一九三三~三八年
第三章 「最終的解決」以前
第四章 絶滅戦争
第五章 大陸規模の犯罪
第六章 収容所と移動式のホロコースト
第七章 大いなる怒り―「解放」と余波
第八章 ホロコーストの記憶
著者等紹介
ストーン,ダン[ストーン,ダン] [Stone,Dan]
ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校歴史学部教授。同大学ホロコースト研究所所長。ホロコーストの歴史以外にも、比較ジェノサイド論、ファシズム、「人種」概念の歴史、それに歴史理論などに関心を寄せている思想史家である。Patterns of Prejudice,Journal of Genocide Research,Critical Philosophy of Race,The Journal of Holocaust Research,Hypothesis and History of Communism in Europe各誌の編集委員、帝国戦争博物館のホロコースト・ギャラリー再編成のための学術諮問委員会議長を務める
大山晶[オオヤマアキラ]
1961年生まれ。大阪外国語大学外国語学部ロシア語科卒業、翻訳家
武井彩佳[タケイアヤカ]
早稲田大学第一文学部史学科卒業。同大学より文学博士取得。専門はドイツ現代史、ユダヤ史、ホロコースト研究。学習院女子大学国際文化交流学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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