出版社内容情報
米中対立の高まりを背景として、近年、「台湾有事」の可能性が現実味をもって議論されている。在日米軍基地の7割を抱える沖縄では、自衛隊の「南西シフト」構想のもと、さらなる軍事化が進む。前線に押し出された沖縄の人びとは、戦時には攻撃対象となるリスクを背負わされている。一方、中国による併合の意図に抗い、自主独立の現状を守りたい台湾にとって、日米の参戦は自らの防衛に有利にはたらく。このような地政学的構造から見たとき、台湾と沖縄は明らかに対峙する関係にある。
だが、歴史的に見れば、両者は、日本と中国という二つの大国の狭間で相似した運命をたどってきた。いまそれぞれが直面する危機も、元をたどれば、帝国による植民地支配や中央集権的包摂/排除に起因する側面が大きい。リアルな戦争に備えて生活空間の軍事化が進展している点においても、こうした境遇の自力での解決が困難な立場にある点においても、共通の課題をもつ。
台湾と沖縄――この〈帝国の狭間〉に置かれた人びとが、立場の違いを乗り越え、ともに平和である道はないのか? 日本の「本土」に暮らすわたしたちは、このようなジレンマを生みだす者としての当事者性を自覚したとき、どのように言葉を紡ぐことができるのか? 本書は、この問いを起点として、歴史認識と倫理的価値にもとづく〈同盟〉を模索する対話の試みである。
内容説明
米中対立下の地政学的分断を越えて、ともに平和であることは可能か?台湾、沖縄、日本本土―それぞれの立場から直面する現実を語り、互いの自己決定権と生存権が守られる道を探る、実験的対話。
目次
1 帝国の狭間から考える(無意識の「大国主義」―台湾処分・琉球処分を支えるもの;帝国の狭間の中の台湾民主―永続する危機の克服に向けて;悲劇の循環を乗り越えるために―呉叡人「帝国の狭間の中の台湾民主」を読んで;軍事化に抗う石垣島の民主主義;東アジアの平和を「帝国の狭間」から考える;近世東アジアの朝貢体制と「漢文の力」―『琉館筆譚』にみる琉球詩人の漂流経験)
2 対話の試み(シンポジウム 台湾と沖縄―黒潮により連結される島々の自己決定権;往復書簡 「わたし」の自己決定権から考える;鼎談 台湾と沖縄がともに平和であることは可能か?)
著者等紹介
駒込武[コマゴメタケシ]
1962年東京都駒込生まれ。東京大学教育学部卒、教育学博士(東京大学)。現職は京都大学大学院教育学研究科教授。専攻は植民地教育史、台湾近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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naok1118
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