出版社内容情報
ギリシア人はなぜ神を人間の姿で表現し、見えない力を形にしたのか。神話・儀式・造形をめぐるイメージの誕生を辿り、古代文化にアプローチするための方法を泰斗が語る。目に見える自然の世界に通常は見えない超自然が「顕現する」。ギリシア人の信じる神々や死者や英雄の亡霊が姿を現す。だが像はやがて現実を伴わないイメージへと変化して幻想領域を拡げていった。西欧の大きな知的水脈である宗教人類学の名著。梗概・前田耕作。
内容説明
なぜ神々は人間の形で表現されたのか。冥界に消えた死者たちはどう描かれたか。著者はイメージの歴史人類学をめざして、神話と論理の間にイメージ=第三の軸を置いた。それはレヴィ=ストロースが無文字社会で展開した「宗教形象」を、古代ギリシアに適応する試みでもあった。フランスきっての古代ギリシア研究の泰斗による九年間の講義集である。ギリシア人は原石・柱・仮面・動物・怪物などに神が宿っていると考えた。神の力がそうした「偶像」に光を送り、シンボルになって人間に話しかけた。やがて偶像が儀式で用いられなくなり、見られるだけの存在になると、宗教的なシンボルはたんなるイメージへと移行した。イメージをフィクションとしてとらえたのがプラトンであり、それは芸術と呼ばれるものへの道を開いた。さらに考古遺物、碑文、テクスト、図像などの資料を駆使して、仮面の神であるゴルゴン、アルテミス、ディオニュソスを追った。超自然の出現を告げる仮面を目印に、ギリシアの多神教の異教的根源が明らかになっていく。各セクションの末尾には、共同研究の演習に集った発表者たちの広範なテーマを記載し、宗教人類学の課題と可能性を指し示している。
目次
第1部(造形のシンボル;死者たちの像)
第2部(神々の像1―ゴルゴン;神々の像2―アルテミスと仮面;神々の像3―ディオニュソス)
著者等紹介
ヴェルナン,ジャン=ピエール[ヴェルナン,ジャンピエール] [Vernant,Jean‐Pierre]
1914‐2007。フランスのプロヴァンに生まれる。地方新聞の編集長だった父は志願兵として第一次世界大戦で戦死、母も8歳で失う。ソルボンヌ大学に入学、共産党青年団に加盟し、第二次大戦中はレジスタンスに参加、内地フランス軍の指揮を執る。48年から国立科学研究所研究員、社会科学高等研究院をへて、75‐84年、コレージュ・ド・フランス教授。専攻はギリシア神話および思想史
上村くにこ[ウエムラクニコ]
1944年生。大阪大学文学部仏文学科博士課程修了、パリ第四・ソルボンヌ大学博士号取得。甲南大学名誉教授
饗庭千代子[アイバチヨコ]
1944年生。関西学院大学文学部仏文学科修士課程修了。元関西学院大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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