出版社内容情報
日本の原子物理学の父、仁科芳雄の足跡を軸に、国内に「科学研究のインフラストラクチャー」が初めて築かれた時代を破格のスケールで描き出す<科学史的伝記>の上巻。ボーア、ディラックらも含め、国内外の現代物理学の立役者たちの動的なネットワークを示し、日本の物理学の歩みをグローバルに位置づける。20世紀の日本の科学史を語るうえで避けて通れない書となるだろう。
上巻は物理学者・仁科の誕生と成長を追いつつ、大学や理化学研究所をはじめとする研究機関の起動と理工学研究の開拓の情景、量子力学およびアインシュタインの相対性理論の登場と、その本邦への導入などを見る。
内容説明
今日の日本を支える先端的物理学研究のインフラとカルチャーが築かれたのは、昭和初期から戦争と敗戦を経て占領期に至る困難な四半世紀の出来事だった。それはいったい、どのようにしてなされたのだろうか。この国に基礎科学のオリジナルで強力な研究伝統が生まれたことは、世界史上、自然科学研究の非西洋圏への広まりのさきがけの一つであり、その幅広い帰結をいま、私たちは目にしている。この歴史的事業のキーパーソンであり、圧倒的牽引力となったのが、仁科芳雄であった。本書は彼の動きを軸に、日本における現代物理学の基盤創設の道のりを詳らかにし、それをグローバルな文脈に位置付ける。上巻は物理学者・仁科の誕生と成長を追いつつ、国内外における理学・工学研究の開拓、理化学研究所および大学の理工学部門の起動、アインシュタインの理論や量子力学の登場と本邦への導入などを見る。欧州が量子革命の只中であった1928年、日本でもこの新しい物理学が湯川・朝永ら優れた若い頭脳の関心を惹き始めていた時、N・ボーアをはじめとする欧州の第一級の研究者たちに交じって現代物理学の地平を展望した仁科芳雄が、留学から帰国する。ここに、世界的な水準の物理学者コミュニティーが生まれようとしていた。
目次
序 仁科芳雄という出来事
1 出自と基礎(里庄の仁科家;少年時代と進路の決定;東京帝大工科大学時代;理化学研究所へ、そして物理学へ)
2 渡欧時代(欧州留学と英独物理学;コペンハーゲンの物理学;相補性とクライン=仁科の式)
3 量子力学の伝道(仁科の帰国と新世代の物理学者たち;量子力学の伝道者たち;仁科研究室創設と「コペンハーゲン精神」;エックス線から宇宙線・原子核へ;理論研究の始まり;台北と大阪の原子物理学;量子力学の哲学と戦前日本の知識人たち;ボーアの来日と相補性)
著者等紹介
伊藤憲二[イトウケンジ]
科学史家。京都大学大学院文学研究科現代文化学専攻科学哲学科学史専修・准教授。2002年、Harvard University,Graduate School of Arts and Sciences,Department of History of ScienceにてPh.D.(科学史)を取得。東京大学先端科学技術研究センター・特任教員(2002‐2006年)、東京大学情報学環・特任講師(2006)、総合研究大学院大学葉山高等研究センター・准教授(2007-2010年)、同大学大学院先導科学研究科生命共生体進化学専攻・准教授(2020-2022年)などを経て、現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takao
読書の鬼-ヤンマ
色は匂へど散りぬるを