出版社内容情報
1923年にマルクス主義の学術拠点として設立された「フランクフルト社会研究所」は、やがてフランクフルト学派として20世紀の思想史に大きな役割を果たした。前年の夏、その準備集会「マルクス主義研究週間」がドイツ・チューリンゲン州のベラで開催された。参加者の集合写真に一人の日本人が写っていた。「FUKUMOTO」すなわち福本和夫であった。
著者はフランクフルト社会研究所の創設期に集った人々の行路を半世紀かけて追った。大富豪の子息であり、「複数主義的なマルクス主義」を構想した創設者ワイル。研究所の運営を担い、盟友である第二代所長ホルクハイマーを支えた「国家資本主義」の理論家ポロック。ポーランド出身で当時のマルクス経済学のキーパーソンだったグロスマン。中国革命を紹介しアジア研究を進めるなかでソ連の体制に疑問を抱き、戦後米国のマッカラン委員会で証言したウィットフォーゲル。創設前から研究所に関わった若き学究の活動家がソ連にリクルートされ、ジャーナリストの姿で中国・日本での諜報に身を投じたゾルゲ。
「思想」が現れては消える「モード」のようなものでなく、世界大の政治の渦の中での生の選択と結びついていた時代を描く。本書は日独精神史でもあり、後世に伝えるべきひとつの世代へのレクイエムとなった。
内容説明
マルクス主義の学術拠点として誕生した「社会研究所」。彼らは世界大の政治の渦の中で生き、理論を構築した。「暗い時代」を潜り抜けた挑戦と思考は今、何を語るか。
目次
第1章 初期フランクフルト社会研究所のマルクス主義と政治
第2章 創設者 フェーリクス・ワイル
第3章 研究所の執事役 フリートリッヒ・ポロック
第4章 異邦人 ヘンリーク・グロスマン
第5章 越境者 カール・A.ウィットフォーゲル
第6章 闇をまとった学究 リヒアルト・ゾルゲ
補遺 イソップのことばとしての“社会研究”―日本と欧州をつないだマルクス主義
著者等紹介
八木紀一郎[ヤギキイチロウ]
1947年生まれ。東京大学文学部社会学科卒。名古屋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。京都大学にて博士(経済学)。京都大学および摂南大学名誉教授。専攻は社会経済学、経済学史・思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Go Extreme