コード・ガールズ―日独の暗号を解き明かした女性たち

マンディ，ライザ【著】〈Ｍｕｎｄｙ，Ｌｉｚａ〉/小野木 明恵【訳】/小谷 賢【解説】

みすず書房（2021/07発売）

• サイズ 46判／ページ数 443p／高さ 20cm
• 商品コード 9784622090199
• NDC分類 936
• Cコード C0022

出版社内容情報

日本軍の真珠湾攻撃が迫る1941年11月、アメリカ海軍から東部の名門女子大に宛てて「秘密の手紙」が送られはじめた。そこには、敵国の暗号解読に当たれる優秀な学生がほしいと記されていた――。
第二次世界大戦中、米陸・海軍に雇われ、日本やドイツなど枢軸国の暗号解読を担ったアメリカ人女性たちがいた。外国語や数学をはじめとする高等教育を受けた新卒者や元教師らが全米各地から首都ワシントンに集い、大戦末期には男性をしのぐ1万人以上の女性が解読作業に従事した。
その働きにより、日本の外交暗号（通称パープル）や陸軍の船舶輸送暗号が破られ、枢軸国側に壊滅的な打撃を与えた。ミッドウェー海戦での米軍の勝利、山本五十六連合艦隊司令長官の殺害作戦の陰にも彼女らがいた。一方、大西洋戦域においてはドイツのエニグマ暗号を解明してＵボートの脅威を排除し、ノルマンディー上陸時の欺瞞作戦でも活躍した。こうした功績がきっかけとなり、それまで女性には閉ざされていた政府高官や大学教授など高いキャリアへの道が切り拓かれることになる。
戦後も守秘義務を守り、口を閉ざしてきた当事者らへのインタビュー、当時の手紙、機密解除された史料などをもとに、情報戦の一翼を担った女性たちに光をあて、ベストセラーとなったノンフィクション。口絵写真33点を収録。解説・小谷賢。

内容説明

日本とドイツは女性に敗れた―。ミッドウェー海戦、山本五十六長官の殺害、日本の輸送船舶とドイツＵボートの追跡、ノルマンディー上陸…第二次大戦の勝敗を分けた戦いの陰には、彼女たちがいた。米陸・海軍で敵国の暗号解読を担った女性たちを描くベストセラー・ノンフィクション。

目次

第１部　「総力戦ともなれば、女性が必要とされるだろう」（二八エーカーに広がる娘たち；「これは男の人の仕事だけど、うまくやれそうです」；もっとも難解な問題　ほか）
第２部　「この広大な海域のいたるところで日本は優勢であった」（「胸がはりさけそうだった」；「ＱはコミュニケーションのＱ」；「地獄の半エーカー」　ほか）
第３部　潮目が変わる（シュガー・キャンプ；「敵がセーヌ河口に上陸」；ティーディ　ほか）

著者等紹介

マンディ，ライザ［マンディ，ライザ］ ［Ｍｕｎｄｙ，Ｌｉｚａ］
アメリカのジャーナリスト。ノンフィクション作家。“ワシントン・ポスト”紙で長年記者を務め、女性問題や労働問題を中心に取材。２０１７年に刊行された『コード・ガールズ―日独の暗号を解き明かした女性たち』は“ニューヨーク・タイムズ”紙ほか主要紙で高評価されて２０万部を超えるベストセラーとなり、１０を超える言語に翻訳されている。情報機関出身者が選ぶ「Ｂｅｓｔ　Ｇｅｎｅｒａｌ　Ａｕｄｉｅｎｃｅ　Ｉｎｔｅｌｌｉｇｅｎｃｅ　Ｂｏｏｋ（一般向けインテリジェンス最優秀書）」（２０１８）にも選出された。“アトランティック”誌、“タイム”誌、“ガーディアン”誌、“ポリティコ”誌などに寄稿。シンクタンク「ニューアメリカ」のシニア・フェロー、「ジャパン・ソサエティ」フェロー、バージニア州アーリントン在住

小野木明恵［オノキアキエ］
翻訳家。大阪外国語大学英語学科卒業（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー

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[つちのこ]

「鉛筆を動かす女たちが日本の船を沈没させる」と比喩された、暗号解読により戦争を終結に導く原動力になった女性たちの存在が浮かび上がった。輸送路を断たれたことで日本兵が餓死し、捨て身の神風特攻隊に繋がっていく過程には戦慄を覚える。一方で、洒落た制服で仕事や食事を楽しむ女性たちと、もんぺ姿の日本女性とのギャップに国力の差を感じてしまう。暗号解読施設が重要視され、終戦後の米ソ冷戦時代から現代への諜報活動に受け継がれたのは米国の先見の明として、少なからず女性の雇用拡大と能力発掘、地位向上に貢献したことも見逃せない。

2023/07/27

[007 kazu]

第二次大戦時、アメリカ陸海軍の暗号解読機関で活動を担っていた大半は女性であった。その業務の機密性の高さから戦後も多くの当事者が口を閉ざし、長い間秘密にされていた事実に焦点をあて、主にインタビューによって構成された貴重な本。当時アメリカでも女性の地位が高くなかった事実も興味深い。が、彼女たちの活躍が戦争の期間を短くしたという評価だ。日本人からすると複雑な気持ちになる描写も。山本五十六の最後はまさに解読によってなされている。ノルマンディー上陸にあたっての諜報活動の描写もエンタメ小説を読んでいるようだった。

2023/07/14

[泰然]

第二次世界大戦中、米国史上初めて軍部に一万人以上採用され、勤勉さと能力で貢献して高い評価を得るも、長く存在を秘匿され続けた女性暗号解読者達を描いた渾身のノンフィクション。リベラルアーツや技術に精通した女性達が男系組織に風穴を開け、外交暗号や太平洋での兵站船舶暗号の解読、大西洋での対Uボート戦の勝利、ノルマンディー上陸作戦などの影にいた彼女らの青春群像、米国の人材戦略、影の哀しみが、静かに胸を打つ。女性活躍社会の先駆けの彼女らが戦後の苦悩のなか守秘義務で口を閉ざしてきた姿は秘すれば花、に通じる精神を感じる。

2021/11/10

[tetsubun1000mg]

すごい本だった。取材対象者が凄い数だし貴重な写真も掲載され驚きの事実を知った。第二次世界大戦が終わって80年がたち、機密解除されて当時の暗号解読者「コード・ガールズ」が取材に答えてくれるようになった。当時は人員が足りずに数学教師や女子大卒の女性を募集し１万人以上が従事していた。　選りすぐりの知性と愛国心を持った女性の活躍で対独・対日の暗号解読能力は飛躍的に高まりほとんど解読されていた。日本の東南アジア戦線への物資・兵糧・戦闘員の輸送船の暗号通信は解読されていたため撃沈・攻撃されて現地に届かなかったのだ。

2021/09/22

[newman]

非常に興味深く読みました。米軍の暗号解読に活躍した人たちの多くは女性であったことに驚きました。そして、きっちりと仕事をこなしたことに感動しました。「マッカーサーの司令部では、自軍についてと同じくらい的確に日本軍の構成を把握できるようになっていた」とあります。それなのに、戦後はアメリカ政府も女性は子どもができたら離職すること。国の保育制度は、共産主義国の制度であるとして廃止されたこと。女性たちに、仕事を止めて家庭に帰り家族の世話をするように訴えかけたことにも驚きました。女性が都合良く利用されているようで。

2022/01/10