出版社内容情報
“なぜ人類だけが、どこまでも数を数えられるのか。それは、ヒトが生得的に数の感覚を持っているからだ”――数は、私たちの思考に深く根付いている。だからこの説明は、一見するともっともらしい。
しかし、アマゾンには数を持たない人々が暮らしている。幼少期、宣教師の父とともにこのピダハン族と暮らし、人類学者となった著者によれば、数は車輪や電球と同じ「発明品」であるという。
「数の感覚」がまったく存在しないというわけではない。ピダハン族や乳児の調査によれば、彼らは数についてごく限られた感覚を持つ。人類は長い間、この曖昧な感覚だけで生きてきたのだ。
そして私たちも、幼い頃は数のない世界を見ていた。今、数がわかるのは、かつて発明された数体系を受け継いだからこそである。各地の言語には、身体やさまざまな物を足がかりに発明が起きた跡が残されている。そしてピダハン族のように、発明が起こらなかった例も存在する。
「わかったのは、ピダハンについてではなく、人類すべてに関することだ」。考古学、言語学、認知科学、生物学、神経科学に散らばる手がかりを横断し、数の発明の経緯を探り、その影響を展望する書。
内容説明
数万年前の狩人が骨に残した刻み目、1+1を理解する新生児のまなざし。数を持たないピダハン族と暮らした著者が縦横に語る、数の誕生の軌跡。
目次
序 人間という種の成功
第1部 人間の営為のあらゆる側面に浸透している数というもの(現在に織り込まれている数;過去に彫りこまれている数;数をめぐる旅―今日の世界;数の言葉の外側―数を表す言い回しのいろいろ)
第2部 数のない世界(数字を持たない人々;幼い子どもにとっての数量;動物の頭にある数量)
第3部 わたしたちの暮らしを形作る数(数の発明と算術;数と文化―暮らしと象徴;変化の道具)
著者等紹介
エヴェレット,ケイレブ[エヴェレット,ケイレブ] [Everett,Caleb]
マイアミ大学人類学部教授、同学部長。専門は人類学・言語学。言語と非言語的な認知・文化・環境の相互作用に関心を持つ。父は『ピダハン』(屋代通子訳、みすず書房、2012年)の著者のダニエル・L・エヴェレット。幼少期に、宣教師の父とともにピダハン族の村で過ごした。『数の発明―私たちは数をつくり、数につくられた』はSmithsonian誌が選ぶ「2017年の10冊」に選ばれ、同年の米国出版社協会の学術出版賞The PROSE Awardを受賞した
屋代通子[ヤシロミチコ]
翻訳家。自然科学系翻訳に取り組む傍ら、被暴力体験のある若者の自立支援に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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