出版社内容情報
1961年に初版が刊行された本書は、法理学、法哲学の基本的著作として、読み継がれている。
著者は法の定義づけより、むしろ法の解明を意図している。法律上の種々の概念および問題の一般的なパースペクティヴを提供するため、法体系の構造分析に加えて、法を成立させる社会現象に注目し、法・強制・道徳のような型の相互の類似点、相違点に照明をあてる。人間が自ら生存を欲する限り、最小限の自明な事実はつぎのような点にあるであろう。1. 人間の傷つきやすさ。2. おおよその平等性。3. 限られた利他主義。4. 限られた資源。5. 限られた理解力と意思の強さ。初めの3点は人間的自然の事実で静的なルールの世界であるが、4. は社会的自然でここで人間は分業・交換・約束・責務を発生させ、動的なルールの世界となる。5. の状況下で「制裁」が本質的必要物となる。こうした提示が鋭く手堅い論理で展開されてゆく。
その後、道徳哲学、政治哲学、社会学にも影響を与え、ドゥオーキン、ロールズ、ノージックとの論争の出発点となった。
内容説明
「法とは何か」、その解明を意図した著作。法と道徳の関連を考察し、第一次的ルールと第二次的ルールの結合から法体系を位置づける。法哲学の基本的著作。
目次
第1章 執拗につきまとう諸問題
第2章 法と命令
第3章 法の多様性
第4章 主権者と臣民
第5章 第一次的ルールと第二次的ルールの結合としての法
第6章 法体系の基礎
第7章 形式主義とルール懐疑主義
第8章 正義と道徳
第9章 法と道徳
第10章 国際法
著者等紹介
ハート,H.L.A.[ハート,H.L.A.] [Hart,Herbert Lionel Adolphus]
1907‐1992。イギリスに生れる。29年オクスフォード大学卒業。32年弁護士となる。39年第二次世界大戦勃発後陸軍省に入り、大戦終結後オクスフォード大学に戻り、45年からニュー・カレッジの哲学のフェロー、テュター、48年に哲学担当の講師、52年から63年まで法理学教授およびフェロー、56年から翌年までハーヴァード大学客員教授、59年から60年までアリストテレス学会会長などをつとめた。68年オクスフォードの法理学教授を退官、72年から78年までブレイズノーズ・カレッジの学長。1992年歿
矢崎光圀[ヤサキミツクニ]
1923年山梨県に生れる。1947年東京大学法学部卒。大阪大学名誉教授、元成城大学法学部教授。専攻、法思想史、法理学。2004年歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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