出版社内容情報
1930年代前半、ソ連は10万人近い富農と「都市の有害分子」をシベリアに移送した。そのうち1万人はオビ川の無人島、ナジノ島に文字どおり遺棄。彼らのその後の運命は? フランスの代表的なソ連史研究家が、新たに発掘した資料からドキュメントする。一つのミクロ・ヒストリーを通して、「壮大な計画」の全容(立案、長距離の移送、強制移住と強制労働)がはじめて明らかに。
内容説明
西シベリアのオビ川に浮かぶ無人島、ナジノ島へ、1933年早春、モスクワとレニングラードから6000人が着のみ着のまま移送・遺棄され、事件は起きた。スターリンが「上からの革命」(富農階級の撲滅、農業集団化、第一次重工業化)に着手したのは1929年。その結果、穀倉地帯ウクライナは大飢餓におそわれる。農民は大挙して都市へ流入、都市では犯罪が激増した。秘密警察は1930年代前半、「大都市の浄化」と称して元富農や「社会的有害分子」の一掃を決め、西シベリアへは13万人強(1933年)が強制移住させられたのだ。ナジノ島の6000人という規模は、シベリアに送られた犠牲者総数の、ほんの芥子種一粒にすぎない。しかし著者は、発掘した「事件」関係の資料から、強制移住政策の全容を知ることになった―「壮大な計画」の立案、拙速な長距離移送が原因の大混乱、送られた人たちの運命まで。フランスの代表的なソ連史研究者ヴェルトは事実を淡々と語り、画期的な研究を実らせた。さらにこの「ミクロヒストリー」をとおして、スターリンの恐怖政治、収容所群島、秘密警察、ソビエト官僚制の実像までが見えてくるだろう。
目次
第1章 「壮大な計画」
第2章 強制移住地、西シベリア
第3章 交渉と準備
第4章 トムスク中継収容所で
第5章 ナジノ島
むすび
エピローグ 1933~1937年
著者等紹介
ヴェルト,ニコラ[ヴェルト,ニコラ] [Werth,Nicolas]
1950年生まれ。フランスのソ連史専門家。フランス国立学術研究所(CNRS)研究員、同研究所付属現代史研究所上席研究員を歴任し、2015年に退職
根岸隆夫[ネギシタカオ]
翻訳家。長くドイツとフランスに住み、戦闘期の欧州政治史、とくに全体主義に関心をもつ。パリ1968年5月、プラハの春、ベルリンの壁の崩壊、ソ連の自壊に遭遇(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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