出版社内容情報
昭和六年から昭和二十一年まで、この日本近代史の暗黒の時代の十五年間、斎藤茂吉の歌はどのようなものであったか。彼は卓越した歌人であったが、同時に国を憂える平均的日本人の一人であった。
本書は彼の尨大な戦争下のそれぞれについて、戦後公表された資料によってその事実関係と背景を精細に追求し、歌による昭和の十五年戦争概史となっている。著者は「いわゆる制服的歌にも歴史的意義、表現の妙を感じ、従来顧られることの少なかった領域に、時代を共有した一人としてかかわった」と述べている。
戦時の日本国民の感情の文学史であり、時代の生きた証言であり、また尨大な現代史の資料のみごとな整序による新鮮な昭和史でもある。「かりがねも既にわたらずあまの原かぎりも知らに雪ふりみだる」の絶唱と、「宋美齢夫人よ汝が閨房の手管と国際の大事とを混同するな」の政治歌を詠う歌人のアイデンティティの研究にも不可欠の書となろう。
目次
1 満洲事変(昭和六(一九三一)年
昭和七(一九三二)年 ほか)
2 支那事変(昭和十二(一九三七)年
昭和十三(一九三八)年 ほか)
3 大東亜戦争(昭和十六(一九四一)年
昭和十七(一九四二)年 ほか)
4 戦後(昭和二十(一九四五)年
昭和二十一(一九四六)年以後)
附録(ローゼンベルク「二十世紀の神話」をめぐる斎藤茂吉の歌;サンカンタン戦 ほか)
著者等紹介
加藤淑子[カトウヨシコ]
1923(大正12)年5月、和歌山県に生まれる。1945(昭和20)年9月、東京女子医学専門学校(現東京女子医科大学)を戦時特例により繰上げ卒業。同年12月、医師免許証を交付せられ、東京都内の総合病院眼科に1986年3月まで勤務。医学博士(論文審査は東京大学医学部教授会、1959年)。1946年、「アララギ」に入会し、1997年末廃刊まで同会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。