内容説明
小さな町セリイを舞台にした短編集28篇の全訳に『朝のコント』からの5篇を付した改訳決定版。
著者等紹介
フィリップ,シャルル=ルイ[フィリップ,シャルルルイ][Philippe,Charles‐Louis]
1874‐1909。フランスの作家。セリイという小さな町に木靴職人の子として生まれる。リセ卒業後パリに出て、市役所勤めのかたわら創作活動。娼婦との同棲体験から生まれた小説『ビュビュ・ド・モンパルナス』を発表。ラルボー、ジッド、エリ・フォールらと交友をもつ
山田稔[ヤマダミノル]
1930年、門司に生まれる。作家
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感想・レビュー
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kana
31
小さな町の、普通なら決して物語に名前付きで出てこないような人達の日常にスポットをあてた連作短編集。子どもから大人まで、乞食から神父まで、その目線は分け隔てなく注がれ、同じ町をモチーフにした風景画をみているような感覚を覚えます。その素朴さは時に美しく、ありふれているようで、1つとして同じでない。連作として描かれることで、その町に流れる空気が読み手の私にもしみ込んできて、独特の慣習や価値観に馴染んでいくのです。彼らの死を描いた「素朴な人々の死」「ある生涯」、子供達の小さな冒険を描いた「箱車」が特に好き。2014/08/02
ぱせり
14
なんとなく覚えがあるような光景は毎日どこかでひっきりなしに見られるけれど、起こったその瞬間を取り出して仔細に眺めてみれば、それは、どこにもない一回限りの出来事で、日常は、奇跡的な瞬間の積み重ねだったよ、と思う。そういう短編集。シニカルな描写で、冷めた笑いを誘うものが多い。『火口屋の娘』『老人の死』『お隣同士』など、好き。 2015/12/22
kibita
13
子供達は冒険をし、老婆をスパイに見立てて遊び、また、幼女は生まれてきた弟に嫉妬する。働き老いて死ぬ。お互い意地悪し合っていたのに居なくなれば、私達大親友だったわねぇの老婆達『お隣同士』など、フランスの小さな町を舞台にした小さくてリアルな連作。読み進めていくうちに、読み手を引き込んでいく不思議で魅力的な本。2025/06/13
春生
7
1800年代後半、セリイというフランスの小さな町を舞台に描かれた短編集。題材は貧困、殺人、病気など、ドラマチックでもない、よくありそうな重い話が多いのに、ひょうひょうと描かれていた。こういう嫌な人いるなと思う人物が数多く登場し、人間って変わんないだろうなあと感じさせられる。一番印象に残ったのは、『アリス』末っ子で甘え放題の子が、弟が生まれて、親の愛情が薄くなったことをなげいて、絶食して死んでしまった女の子の話。2010/02/05
takao
3
ふむ2024/04/24