万物は流転する

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  • サイズ B6判/ページ数 296p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622077848
  • NDC分類 983
  • Cコード C0097

出版社内容情報

0年間、強制収容所の囚人だった男がスターリンの死後に出所したのちの物語。『人生と運命』の作家、渾身の遺作。解説・亀山郁夫

30年間、強制収容所の囚人だった男がスターリンの死後に出所したのちの物語。才気煥発の青年は、老人として一般社会に戻った。彼を密告した男も、真実を求めて闘った従弟も、体制内で出世していた─。『人生と運命』の作家、渾身の遺作。渦中を生きた者だけが書きうる時代の証言である。解説・亀山郁夫。

内容説明

1953年、スターリンが死んだ。神のような指導者の突然の死が、国土を震撼させる。ラーゲリ(強制労働収容所)からは何百万もの人びとがぞくぞく出所してきた。主人公イワン・グリゴーリエヴィチは自由を擁護する発言を密告され、29年間、囚人であった。かつて家族の希望の星だった育年は、老人となって社会に戻った。地方都市でささやかな職を得たイワンは、白髪が目立つが美しい女性アンナと愛しあうようになる。彼女には、ウクライナで農民から穀物を収奪し飢饉に追い込んだ30年代の党の政策に、活動家として従事した過去があった。生涯で一番大事なことを語りあうふたり。しかし…。作家グロスマンが死の床でも手離さなかった渾身の遺作。

著者等紹介

グロスマン,ワシーリー[グロスマン,ワシーリー] [Гроссман,Василий]
1905‐1964。ウクライナ・ベルディーチェフのユダヤ人家庭に生まれる。モスクワ大学で化学を専攻。炭鉱で化学技師として働いたのち、小説を発表。独ソ戦中は従軍記者として前線から兵士に肉薄した記事を書いて全土に名を馳せる。43年、生まれ故郷の町で起きた独軍占領下のユダヤ人大虐殺により母を失う。44年、トレブリンカ絶滅収容所を取材、ホロコーストの実態を世界で最初に報道する。次第にナチとソ連の全体主義体制が本質において大差ないとの認識に達し、50年代後半から大作『人生と運命』を執筆、60年に完成。「雪どけ」期に刊行をめざすが、KGBの家宅捜索を受けて原稿は没収(友人が秘匿していた原稿の写しがマイクロフィルムに収めて持ち出され、80年スイスで出版。ソ連国内で88年、邦訳は2012年みすず書房より刊行)

齋藤紘一[サイトウコウイチ]
1943年群馬県生まれ。東京大学理学部化学科卒。在学中に米川哲夫氏にロシア語を学ぶ。通産省入省後、課長・審議官を務める。93年退官後、ISO(国際標準化機構)日本代表委員、独立行政法人理事長をへて現在、翻訳家。99年、通訳案内業免許(ロシア語)取得。『人生と運命』(全三巻、みすず書房)の翻訳で日本翻訳文化賞(2012年度)を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイトKATE

47
グロスマンの『万物は流転する』は代表作『人生と運命』の1/5の文章量だが、内容は衝撃的である。その衝撃は、ウクライナにおける虐殺に等しい飢饉、粛清の名のもとに多くの人々が処刑や強制収容所に連行されたスターリン時代の恐怖を暴いているからである。さらに、グロスマンはソヴィエトという国家の欠陥が、レーニンの自由への軽蔑と、スターリンの自由への憎悪と恐怖から抹殺したからだと容赦なく看破している。そして、ロシアが自由を知らず“奴隷の国”であり続けているというグロスマンの指摘は、現代のロシアに重く圧し掛かっている。2022/03/18

miyu

39
ラーゲリ帰りのイワンの物語の途中途中に作者の事実への考察が入る複雑な作品だった。丁寧な註で語られる人物の半数に「逮捕、処刑」とあるのには驚く。ラーゲリに送られるのも周囲を密告して生き残るのも、国家的に餓死させられるのも元は同じ人々だったのだ。グロスマンの語りに国家や人への告発のようなものは感じない。作者の視線は時に冷たく一方でどこまでも慈しみ深い。「万物は流転する…けれども」「万物は流転する…だとしたら」起きたこと起こしたことが事実として残っても人はなお生きていく。忘れずに生きていくのだ。素晴らしかった。2017/08/11

Miyoshi Hirotaka

37
ロシア革命が進行中だった1918年、ウェーバーやシュンペーターは「共産主義が犯罪的で、人間の悲惨を突きぬけ、恐るべき破滅に終る」と予測。半世紀前に書かれたこの本は、その証明に挑戦。スターリン主義という地獄は、千年続いたロシアの奴隷制が国家社会主義に変容したもの。この過程で人間は計画を遂行させるためだけ存在でしかなくなり、価値が失われた。原題は、「万物は流転する・・・」という詠嘆形。そこには、ソビエト権力も創始者レーニンも変化せざるを得ない。それでも人間の自由に対する希求は変わらないという強い意思がある。2014/07/26

キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん

26
スターリン時代、ラーゲリに抑留されていた大学教員が、スターリン死後に解放されて出てくる。スターリン時代、国家は国民の召使から、不機嫌な専制君主へと変身した。全ては革命、国家の建設のため。大学教員を密告した友人たちも、ウクライナで起こった恐ろしい大量餓死も、ラーゲリで子どもを思う無実の母親の死も、全部新しい国家のため。自由を奪うのも、穀物をひと粒残らず奪うのも、国家の建設のため。斧で打たれて消えていく民主主義や個人の自由や言論。戦争のように奪い尽くされた全体主義時代に言葉を失う。2022/07/22

春ドーナツ

23
ロシア1000年の歴史を貫く地下水脈から「非ー自由」が枯れることはなかった。アレクサンドル2世の「農奴解放令」は転機になったかも知れないが、「非ー自由」は残り続け混迷はさらに深まる。ここを起点として著者はレーニン・スターリン批判を行う。自由を知らない者が革命によって人々と自由を分かち合うことができようか。**「自由を語る者は、自由が内包する『悪』を知見していなくてはならない」というような一文をどう受け止めたら良いのだろう。私は考えて考えている。**本国刊行には「ペレストロイカ」を待たなくてはならなかった。2018/07/19

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