出版社内容情報
本書が扱うのは20世紀クラシック音楽だが、その作曲家はじつに多彩だ――マーラー、シェーンベルク、ストラヴィンスキー、ドビュッシー、シベリウス、ショスタコーヴィチ、コープランド、ブリテン、リゲティ、ブーレーズ、ケージ、メシアン、シュトックハウゼン、グラス、ライヒ、アダムズ等々。彼らについては伝記では縦割り、専門書では横割り、演奏批評では折々に言及され、その多くは演奏会プログラムの主流にある。しかし、点在する断片としての彼らを結ぶ無数の伏線をたぐりよせ、ひとつの壮大な文化史が描けると考えた本は、本書の前にはなかった。魅力的な群像、目から鱗のエピソード、楽曲分析、文化批評を駆使して圧巻の音楽史を描いて見せる本書は、その試みに見事に成功している。欧米各国で絶賛。全米批評家協会賞ほか受賞の注目の音楽批評家による記念碑的デビュー作。全2巻。
1巻はリヒャルト・シュトラウスの《サロメ》オーストリア公演をめぐって劇的に幕を開け、本書の主題を提示。調性崩壊の始まりと初期の前衛、ヴァイマール期の「実用音楽」、スターリンによる音楽の政治化を経て、ニューディール期アメリカにおける「万人のための音楽」までを語る。
2巻の記述はナチ・ドイツ時代の音楽から始まる――権力者としてのヒトラーの音楽への態度は、スターリンと奇妙な好対照をなしていた。冷戦は政治的に正しい音楽の勃興という影を落とし、前衛は作曲家にとってほとんど義務となったが、その背後には諜報機関の存在があった――。ジェンダーやセクシュアリティなど近年の音楽学の成果も導入し、記述は分野横断的になっていく。
「著者はポピュラーなジャンルにも精通しており、幅広いジャンルを軽々と渡り歩いて議論を進めていく。たとえばショスタコーヴィチの第五交響曲の緩徐楽章に出てくるメロディとミュージカル《ショウ・ボート》のコーラスに同じ音程関係が現れ、シベリウスの第五の冒頭とコルトレーンの《至上の愛》の音型が同じだと指摘する。こうした議論ができる人はこれまでいなかった」(訳者あとがきより)
現代音楽と聴衆の乖離は、寒々しい前衛が招来した必然だった。しかし本書は新たな好奇心に火をつけ、音楽の聴き方に、これまでにない地平を拓く。巻末に、著者による詳細な「音源・読書案内」を付す。
内容説明
「全ては神秘に始まり政治に終わる」。世紀後半、音楽は革命と反革命、理論と論争、連合と分裂の大狂乱に陥る。無数のクラシックの系譜は後期資本主義社会で大融合を迎えるのか。全米批評家協会賞受賞の壮大な文化史。
目次
第2部 一九三三‐一九四五年(承前)(死のフーガ―ヒトラー時代のドイツ音楽)
第3部 一九四五‐二〇〇〇年(零時―合衆国軍とドイツの音楽、一九四五‐一九四九年;すばらしい新世界―冷戦と五〇年代の前衛;「グライムズ!グライムズ!」―ベンジャミン・ブリテンの情熱;ザイオン公園―メシアン、リゲティ、六〇年代の前衛;ベートーヴェンは間違っていた―バップ、ロックそしてミニマリストたち;沈める寺―世紀の終わりの音楽)
著者等紹介
ロス,アレックス[ロス,アレックス][Ross,Alex]
1968年ワシントンDC生まれ。作曲家を目指すが、ハーヴァード大学在学中に書き始めた評論が評価され、卒業後は音楽雑誌や『ニューヨーク・タイムズ』紙などに音楽評を寄稿。1996年からは『ニューヨーカー』誌の音楽批評を担当。音楽批評家としての受賞多数(ASCAP Deems Taylor Awards for music criticism、Holtzbrink Fellowship、Fleck Fellowship、Letter of Distinction from the American Music Center)
柿沼敏江[カキヌマトシエ]
国立音楽大学楽理科、お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。カリフォルニア大学サンディエゴ校音楽学部博士課程修了。1989年、ハリー・パーチの研究でPh.D.を取得。現在、京都市立芸術大学音楽学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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34
メルセ・ひすい
takao
Decoy
千葉さとし