生物多様性「喪失」の真実―熱帯雨林破壊のポリティカル・エコロジー

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  • サイズ B6判/ページ数 262,/高さ 19cm
  • 商品コード 9784622075288
  • NDC分類 653.29
  • Cコード C0045

出版社内容情報

誰もが望んでいるはずの生物多様性の保全が、なぜ国際政治の争点となるのか。不思議に感じたら、本書を手にとってほしい。
地球上でとびぬけて高い生物多様性を有する熱帯雨林。その急速な破壊と、先進国の食卓にたどりついた一本のバナナの関連を、本書は丹念にたどっていく。熱帯雨林の複雑性、その土地をめぐる人々のさまざまな思惑と現実。雨林周辺に噴出する困難の数々を、かけがえのない多様性もろとも飲み込んでいるのが、バナナ・プランテーションだ。さらに第三世界における二極経済の構造、および南北問題というより大きな構造が、バナナの大海原を支えている。こうした雨林破壊の「因果関係のネットワーク」を、著者はダイナミックに描き出す。
本書のもう一つの主眼は、景観の設計を軸とする保全戦略の意義を解説し、基本認識として幅広い読者と共有することだ。
「熱帯雨林を守るためにはどうすればよいかを明確に示したい。……広い地域を購入して武装したガードマンを配置してそれを守るといった方法はばかばかしいかぎりだ、という私たちの考え方に、読者の皆さんも同感するようになっていただきたい。」
今日の環境保全戦略には、科学的合理性と同時に、利害関係者の土地の保障・食の安定を視野にいれるポリティカル・エコロジーの多角的視点が求められている。

内容説明

安すぎるバナナほど、高くつく。熱帯雨林破壊につながる「因果関係のネットワーク」を描き出す。生物多様性保全のためのポリティカル・エコロジー入門。

目次

1 朝食は熱帯雨林スライスを添えて
2 熱帯雨林は脆弱ではなく、安定もしていない
3 熱帯雨林の土壌における農耕
4 熱帯雨林地域における農業の政治経済的側面
5 現代の世界システムにおける農業の多彩な側面
6 伐採および関連活動のポリティカル・エコロジー
7 グローバル化とニュー・ポリティクス
8 熱帯雨林保護の取り組み―直接か、間接か
9 生物多様性、農業、そして熱帯雨林
10 熱帯雨林の社会的構築
11 過去の原因、未来のモデル、現在の行動

著者等紹介

ヴァンダーミーア,ジョン・H.[ヴァンダーミーア,ジョンH.][Vandermeer,John H.]
ミシガン大学生態学・進化生物学部教授。生態系における人口動態モデルの非線形ダイナミクスの研究、および熱帯アメリカにおける間作およびアグロフォレストリー・システムの研究を専門とし、理論と実践の両面に統合的にアプローチする際立った実績をあげている

ペルフェクト,イヴェット[ペルフェクト,イヴェット][Perfecto,Ivette]
サグラド・コラソン大学(プエルトリコ)卒業後、プエルトリコ環境保護局の大気汚染調査官を経て、ミシガン大学大学院で生態学研究の道に入る。現在、ミシガン大学資源・環境学部教授。農地のランドスケープと生物多様性および農業の持続性の関連を、コーヒー農園をモデルに研究している。また、ニカラグア大西洋岸の低地における農業生態学も研究対象

新島義昭[ニイジマヨシアキ]
翻訳家、フェロー・アカデミー講師

阿部健一[アベケンイチ]
人間文化研究機構総合地球環境学研究所、教授。環境人類学・相関地球研究。東南アジア熱帯林のポリティカル・エコロジーを、地域研究的アプローチにより研究してきた。現在は関心をアジアの環境問題に拡げている。京都大学東南アジア研究センター助手、国立民族学博物館助教授、京都大学地域研究統合情報センター助教授を経て、現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Francis

17
7年以上も積読していた本。中米のコスタリカのバナナ産業を例にして熱帯雨林の生物多様性がどのようにして失われているかを考察。この本が他とは異なるところは例えば「人口増が生物多様性消失の原因である。」とか「グローバル経済が生物多様性消失の原因である。」などと性急かつ安易な原因の究明はせずに、様々な観点から原因の究明、そして解決策を提示しようとしているところだろう。英語版第2版は2005年出版なので、現状はどうなっているのか、第3版は出ているのか、それが気になる。2018/03/28

takao

1
ふむ2021/06/25

orangepelican

1
熱帯雨林の保護に関する本ですが、生態学的な部分については要所をおさえつつ、必要最低限の記述といった感じで、政治・社会的問題に重点を置いて書かれている。自然保護を考えた時に、間違いなくキレイ事ではうまくいかないので、このようなことを知識として学んでおくことは重要だと思う。原著が英語なので、どこまで信用できる書なのかはなかなか確かめられませんが、きちんと参考文献も記載されているので、英語が堪能な方ならそのあたりも確かめられると思う。2015/07/16

天下つむじ大将軍

1
熱帯雨林破壊の問題は我々が想像する以上に複雑だ。生態学的視点のみならず、政治社会的、地理経済的、その他の知識を動員して、因果関係の分析と、その解決策の提示に取り組む本書は、まさに、"広範な専門分野を横断しようとする知的勇気、時間をかけてもつれた糸を解きほぐす忍耐力と、安易な解答でなく問題の本質を探ろうとする誠実さ"(p255解説より)を兼ね備えている。環境問題以外にも、様々な教養を提供してくれる良書である。是非オススメしたい一品。2013/02/08

メルセ・ひすい

0
13-107 度を超すカネ中心・「人間中心主義」!熱帯雨林の悲鳴が聞こえる。冷めた「熱帯雨林ブーム」‘92の「地球環境サミット」が頂点…寒い。。☆先進国 工業・資源国の食卓に安価に並びなんの苦もなく食す一本の゙バナナ゙◎この書が丹念に辿っていく☆恐怖が…懺悔が!誰もが望んでいるはずの生物多様性の保全が、なぜ国際政治の争論となるのか。地球上で、飛びぬけて高い生物多様性を有する熱帯雨林。その破壊につながる、因果関係のネットワークを描き出す。 解説:阿部健一2010/06/22

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