出版社内容情報
誰もが望んでいるはずの生物多様性の保全が、なぜ国際政治の争点となるのか。不思議に感じたら、本書を手にとってほしい。
地球上でとびぬけて高い生物多様性を有する熱帯雨林。その急速な破壊と、先進国の食卓にたどりついた一本のバナナの関連を、本書は丹念にたどっていく。熱帯雨林の複雑性、その土地をめぐる人々のさまざまな思惑と現実。雨林周辺に噴出する困難の数々を、かけがえのない多様性もろとも飲み込んでいるのが、バナナ・プランテーションだ。さらに第三世界における二極経済の構造、および南北問題というより大きな構造が、バナナの大海原を支えている。こうした雨林破壊の「因果関係のネットワーク」を、著者はダイナミックに描き出す。
本書のもう一つの主眼は、景観の設計を軸とする保全戦略の意義を解説し、基本認識として幅広い読者と共有することだ。
「熱帯雨林を守るためにはどうすればよいかを明確に示したい。……広い地域を購入して武装したガードマンを配置してそれを守るといった方法はばかばかしいかぎりだ、という私たちの考え方に、読者の皆さんも同感するようになっていただきたい。」
今日の環境保全戦略には、科学的合理性と同時に、利害関係者の土地の保障・食の安定を視野にいれるポリティカル・エコロジーの多角的視点が求められている。
内容説明
安すぎるバナナほど、高くつく。熱帯雨林破壊につながる「因果関係のネットワーク」を描き出す。生物多様性保全のためのポリティカル・エコロジー入門。
目次
1 朝食は熱帯雨林スライスを添えて
2 熱帯雨林は脆弱ではなく、安定もしていない
3 熱帯雨林の土壌における農耕
4 熱帯雨林地域における農業の政治経済的側面
5 現代の世界システムにおける農業の多彩な側面
6 伐採および関連活動のポリティカル・エコロジー
7 グローバル化とニュー・ポリティクス
8 熱帯雨林保護の取り組み―直接か、間接か
9 生物多様性、農業、そして熱帯雨林
10 熱帯雨林の社会的構築
11 過去の原因、未来のモデル、現在の行動
著者等紹介
ヴァンダーミーア,ジョン・H.[ヴァンダーミーア,ジョンH.][Vandermeer,John H.]
ミシガン大学生態学・進化生物学部教授。生態系における人口動態モデルの非線形ダイナミクスの研究、および熱帯アメリカにおける間作およびアグロフォレストリー・システムの研究を専門とし、理論と実践の両面に統合的にアプローチする際立った実績をあげている
ペルフェクト,イヴェット[ペルフェクト,イヴェット][Perfecto,Ivette]
サグラド・コラソン大学(プエルトリコ)卒業後、プエルトリコ環境保護局の大気汚染調査官を経て、ミシガン大学大学院で生態学研究の道に入る。現在、ミシガン大学資源・環境学部教授。農地のランドスケープと生物多様性および農業の持続性の関連を、コーヒー農園をモデルに研究している。また、ニカラグア大西洋岸の低地における農業生態学も研究対象
新島義昭[ニイジマヨシアキ]
翻訳家、フェロー・アカデミー講師
阿部健一[アベケンイチ]
人間文化研究機構総合地球環境学研究所、教授。環境人類学・相関地球研究。東南アジア熱帯林のポリティカル・エコロジーを、地域研究的アプローチにより研究してきた。現在は関心をアジアの環境問題に拡げている。京都大学東南アジア研究センター助手、国立民族学博物館助教授、京都大学地域研究統合情報センター助教授を経て、現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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